166 / 168
【 未 来 】
魔王と先王【下】
しおりを挟むでまぁ。その頃の魔王はと言うと。
「ヘックシュン! あーなんだまさか風邪か? この私が?」
乗り込んだ組織の庭で緊張感もなくクシャミをしていた。
「何を馬鹿な事を言ってるんですか。だとしたら一大事ですよ。何百年ぶりですか?」
「流石に分からん」
「まぁいいです。粗方片付いたようですし後は“カミルラ”に任せましょう」
赤髪のポニーテールの魔族の背を見てハクイは言う。腰には何処かの国の刀と言う武器を携え、どっしりと構えた魅惑的な女性だ。
「と言うか彼女が全て片付けなかったか?」
「豪快そうに見えて意外と頭も使う人ですから、引っ立てるのはお得意でしょうし」
「久々の出動だったからなぁ、ここ何百年かは平和で平和で、見ろあの指揮の高まり、彼女達の生き生きとした顔。わざわざ二人でついてくる必要もなかったな」
「流石は我が魔族の元騎士団、現王国騎士団なだけありますね」
まぁ昔と比べれば戦争などではなく平和なものだ。と言いつつも魔王は眉を寄せる。
「それにしても忌々しい。まさか私の知らぬ所でこんな所業が許されていようとは」
助け出された者達の中には魔族だけでなく人間も混じっていた。
「少し前まででは考えられなかった事です」
「まったくだ」
以前であれば人間には触るな触れるな近付くな関わるな。と言うのが暗黙の了解であった筈だが昨今の変化により、人間との距離が近くなった。それは良い変化ではあるが、悪い変化もうんだのだ。
「少なからず眼を光らせておきましょう。法改正も進めなければいけませんね」
「そうだな。任せたぞ」
それにしてもと、魔王は肩を竦める。
「あれは本当に帰って来ると思うか?」
わたくしに聞かないで下さいとハクイは淡々と言う。その言葉に魔王は冷たいなと肩をすくめた。
「どうしてあぁも気付かぬ間に何処かへフラフラといなくなり、目の届かぬところで面倒事に首をつっこむのか、おちおち寝てもいられん」
「リーベもだいぶ大きくなりましたからね。ハメを外しているのでしょう」
「元からな気がするが」
「それを言われると否定出来ませんが」
魔晶石のお陰でだいたいの居場所は分かるものの、探しに行けば上手いこと身を隠される事も多く。ありえない話だが実は何かしらの術を使えるのではと魔王は疑わずにはいられない。
「心配だ」
「心配しても始まりません」
あぁと真っ青な空を仰いで魔王は眼を閉じるとあの空色の瞳を思い浮かべる。
そんな事を思われてるとは知らず、ことの成り行きを粗方見届けた青年は、あとの事は全てアルデラミン達に任せ、いつもの農夫の格好に着替えてリーリアとのんきに庶民的な馬車に乗り換え揺られていた。
ふと、そう言えばと口を開く。あの姿は一度も見せた事がなかったのにどうして自分だと分かったのかと。
するとリーリアは
「だってほかに見た事なかったから、あんな綺麗な黄金髪に空色の瞳を持つ人を」
にこやかに微笑んでそう言った。
end.
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

ペットの餌代がかかるので、盗賊団を辞めて転職しました。
夜明相希
BL
子供の頃から居る盗賊団の護衛として、ワイバーンを使い働くシグルトだが、理不尽な扱いに嫌気がさしていた。
キャラクター
シグルト…20代前半 竜使い 黒髪ダークブルーの目 174cm
ヨルン…シグルトのワイバーン シグルトと意志疎通可 紫がかった銀色の体と紅い目
ユーノ…20代後半 白魔法使い 金髪グリーンの瞳 178cm
頭…中年 盗賊団のトップ 188cm
ゴラン…20代後半 竜使い 172cm

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

息の仕方を教えてよ。
15
BL
コポコポ、コポコポ。
海の中から空を見上げる。
ああ、やっと終わるんだと思っていた。
人間は酸素がないと生きていけないのに、どうしてか僕はこの海の中にいる方が苦しくない。
そうか、もしかしたら僕は人魚だったのかもしれない。
いや、人魚なんて大それたものではなくただの魚?
そんなことを沈みながら考えていた。
そしてそのまま目を閉じる。
次に目が覚めた時、そこはふわふわのベッドの上だった。
話自体は書き終えています。
12日まで一日一話短いですが更新されます。
ぎゅっと詰め込んでしまったので駆け足です。
【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。
ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。
皇帝に追放された騎士団長の試される忠義
大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。
帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか?
国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる