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【 未 来 】
魔王と先王【下】
しおりを挟むでまぁ。その頃の魔王はと言うと。
「ヘックシュン! あーなんだまさか風邪か? この私が?」
乗り込んだ組織の庭で緊張感もなくクシャミをしていた。
「何を馬鹿な事を言ってるんですか。だとしたら一大事ですよ。何百年ぶりですか?」
「流石に分からん」
「まぁいいです。粗方片付いたようですし後は“カミルラ”に任せましょう」
赤髪のポニーテールの魔族の背を見てハクイは言う。腰には何処かの国の刀と言う武器を携え、どっしりと構えた魅惑的な女性だ。
「と言うか彼女が全て片付けなかったか?」
「豪快そうに見えて意外と頭も使う人ですから、引っ立てるのはお得意でしょうし」
「久々の出動だったからなぁ、ここ何百年かは平和で平和で、見ろあの指揮の高まり、彼女達の生き生きとした顔。わざわざ二人でついてくる必要もなかったな」
「流石は我が魔族の元騎士団、現王国騎士団なだけありますね」
まぁ昔と比べれば戦争などではなく平和なものだ。と言いつつも魔王は眉を寄せる。
「それにしても忌々しい。まさか私の知らぬ所でこんな所業が許されていようとは」
助け出された者達の中には魔族だけでなく人間も混じっていた。
「少し前まででは考えられなかった事です」
「まったくだ」
以前であれば人間には触るな触れるな近付くな関わるな。と言うのが暗黙の了解であった筈だが昨今の変化により、人間との距離が近くなった。それは良い変化ではあるが、悪い変化もうんだのだ。
「少なからず眼を光らせておきましょう。法改正も進めなければいけませんね」
「そうだな。任せたぞ」
それにしてもと、魔王は肩を竦める。
「あれは本当に帰って来ると思うか?」
わたくしに聞かないで下さいとハクイは淡々と言う。その言葉に魔王は冷たいなと肩をすくめた。
「どうしてあぁも気付かぬ間に何処かへフラフラといなくなり、目の届かぬところで面倒事に首をつっこむのか、おちおち寝てもいられん」
「リーベもだいぶ大きくなりましたからね。ハメを外しているのでしょう」
「元からな気がするが」
「それを言われると否定出来ませんが」
魔晶石のお陰でだいたいの居場所は分かるものの、探しに行けば上手いこと身を隠される事も多く。ありえない話だが実は何かしらの術を使えるのではと魔王は疑わずにはいられない。
「心配だ」
「心配しても始まりません」
あぁと真っ青な空を仰いで魔王は眼を閉じるとあの空色の瞳を思い浮かべる。
そんな事を思われてるとは知らず、ことの成り行きを粗方見届けた青年は、あとの事は全てアルデラミン達に任せ、いつもの農夫の格好に着替えてリーリアとのんきに庶民的な馬車に乗り換え揺られていた。
ふと、そう言えばと口を開く。あの姿は一度も見せた事がなかったのにどうして自分だと分かったのかと。
するとリーリアは
「だってほかに見た事なかったから、あんな綺麗な黄金髪に空色の瞳を持つ人を」
にこやかに微笑んでそう言った。
end.
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