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【 過 去 】
藍色の少年(2)
しおりを挟む――変な奴に眼をつけられてしまったと頭を痛めながら帰路につく。
だがもう彼に帰るあてはない、母親は1年前のあの日を最後に息を引き取った。そして今更になって流行り病の原因がシェーレグリーンという色の成分だと言う事がわかり、国で救済措置をとり始めた。
シェーレグリーンはただの色じゃない、ヒ素が配合された毒だ。母親が仕事場で作っていた造花、それがまさに鮮やかな緑色だったのだ。
幸いにも彼にはその中毒症状は出なかった。
それがいいのか悪いのかはわからない。
歩きながらパンを食べて、壁から剥がれ落ちそうになっている紙が眼に止まる。
それは先程少年が言っていた兵士募集の貼り紙だった。
「センソーでも始まるのかな?」
足元から声がして、見るとみすぼらしい身なりをした男の子が貼り紙を見上げていた。その隣には妹なのか小さな女の子も居て、二人は手を繋いでいる。
「字が読めるのか?」
「ううん、おとな達がこれ見てそういってたから」
「そうか……」
すると女の子の腹からぐぅ~と音が鳴った。
「…………やる」
暫く互いに黙りこんで、彼はその女の子にパンの入った紙袋を渡す。すると男の子が「いいの?」と聞いてきたので彼は「二人で食べろ」と言った。
子供達がはしゃぎながら走り去った時、丁度強い風が吹き上がり彼の顔に何かがぶつかる。
それは先程の貼り紙だ。
「…………」
『待っているよアルデラミン』
あの声に囁かれた気がした。
************
それから何年もかけて、気付けば彼は少年の前にいた。
いや少年はもう青年になっており、此方を眼に止めると分かっていたとでも言うように微笑する。
「待っていたぞ〝アルデラミン〟」
そう呼ばれた彼は王宮の豪奢な床に片膝を付き顔を上げる。
やはりと言うべきか、あの少年は本物であったのだと思い知らされる。
黄金の髪を1本に束ねて、ハッとするような空色の瞳が此方を見据える。
何故ここに自分はいるのか、何故ここまで来てしまったのか。それらは全て考えても仕方のない事と呑み込んで
ただ後に聞いてみた。
どうして俺なのか。
どうしてそう呼ぶのかと。
すると青年は、真っ直ぐな藍色の瞳が美しかった。と少しからかうように言い。
最後に「知らないのか? 〝王の右腕〟と言う意味だ」と微笑んだ。
藍色の少年 end.
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