魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。

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第五章

水魚の交わり14

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(おいおい、なんでそこで俺を睨むかなー)

 獣のように呻って此方を刺すように睨んでいるが不思議と妙な体勢のまま身動き一つとらない。

(いや、とれないのか?)

 その姿は必死に身体を動かそうとしているようにも見えた。

「全くどうして直ぐにわたくしを呼ばないのですか」

 地にいる魔王の所へと降下しながらハクイは淡々と問う。

「いやお前は気付いていて来ないのだとばかり」
「魔王さまわたくしが今朝から野暮用で城を空けていたのをお忘れで?」
「まさか知ってはいたさ、知ってはいたんだが」
「まぁいいでしょう」

 ふわりと地へ降り立ち、ハクイは魔王の側に青年をおろした。

「だ、大丈夫か少年?」
「魔王さま、少年じゃなくてロワだってば。いやてかなんで直ぐに動かなかったんですか」
「いや今動こうとだな」

 言い訳を始めた魔王へ青年が冷たい視線を送っていると、脚元から子供が唸る声がした。

「うぅ~ハクイ様のバカ~」
「み、耳が、死ぬかとおもっただろ!」

 先程の耳鳴りのような音が余程堪えたらしく、両耳を押さえて地に伏している。

「自業自得でしょう。そもそもどうしてこんな夜更けに起きているんですか、さっさと寝なさい」

 ハクイの言葉に子供達は口々に「だってエル様が」と泣きべそをかきながら言う。彼がどうしたのかと問うと朝方様子がおかしく、その後から姿を見ないので心配で探していたのだと。

「なるほどそうでしたか」

 ハクイは妙に納得した顔で頷いた。

「まぁそれはそれとして、エルディアブロここにいるみなに謝りなさい」

 まだ一人夜空にいる悪魔に言う。

「ほざけ誰が貴様なんぞの言う事など、もとはと言えば全て貴様のせいだ」

 もう動けるようになったのか此方へ力強く指を差し叫ぶ。しかしハクイはなんの事やらととぼけるのでエルディアブロはぶるぶると身を震わせた。

「貴様この場で言わせる気か? そこにガキ共もいるんだぞ?」
「何を言ってるんですか、わたくしは周りへ迷惑をかけたことを謝りなさいと言っているんです」

 だがエルディアブロは全く納得出来ないらしい。低く唸ったかと思うと静かに声を張り上げていった。

「……よおく分かった。ならば貴様がした事から先に謝って貰うぞ。良く聞けそこのウスノロ共!」

 誰の事かと青年は魔王とイェンと顔を見合わせまさか俺達の事かと気付く。

「そいつは昨晩いつもの如く」

(いつもの如く?)

「夜這いに来たかと思ったら」

(夜這い来たかと思ったら!?)

「人を好き勝手弄び朝にはすっかり姿を消しやがった、そこまではまだいつもの事だ別に今更何も言わん」

(いやいやいいのか!?)

 三人で内心ツッコミをいれるがエルディアブロにとってこの次が重要だった。

「だがそのあと貴様は何事もなかったかのように女を引っ掛けていただろう! 人を弄ぶのも大概にしやがれこの外道!!」

「あーえーと、ハクイ様とコイツってそんな関係? そんな関係なのねぇ?」

 青年は思わず魔王とイェンを問いただす。すると気不味そうに顔をそむける面々。
 わかっていないのは子供達だけだ。

「何を怒っているのかと思ったら、あの令嬢はわたくしを美しいと言ったので、美しいだけではない事を教えてさしあげただけですよ」

 しれっと言ってのけるハクイ。堪らず青年は口を挟む。

「ちょっと待ったハクイ様ストップ。ハクイ様が最低って事は分かったからとりあえず一旦ストップ」

 だがそんな言葉は二人には届かない。

「貴様は誰でもいいのか! この下衆が!」


 その様を遠い目をして眺めていた魔王とイェンは気付いた。


((つまりこれは、ただの痴話喧嘩))



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