107 / 168
第五章
水魚の交わり08
しおりを挟むそうさとイェンは続ける。
そもそも悪魔には親がいない。生き物が死んだ生まれ変りとも言われる彼らは、邪気を栄養分に育ったとは思えないほど美しい花から産まれるのだ。その時にはもう人間でいう四歳くらいの子供の姿をしている。
そして物事の良し悪しの区別もつかない彼らは、好き勝手に生きるが故に子供のうちに様々な理由で死んでいく。
例えば人間に悪さをはたらきそのせいで殺されたりと。
「おまけに人間は魔族と悪魔の区別なんかつかないだろ? 人間ではないけれど人間のような姿をした者を全て魔族だと思うんだから、悪さをしてるのをぜーんぶ魔族のせいにしやがる、こっちとしては頭が痛いったら~て、悪い。今この話は関係ないか」
頭をかきながらそう謝ると、目の前の青年は思った以上に深刻な顔をしていた。
「……あーそれで、あの悪魔がなんなのかって話しなんだけど、ハクイ様の」
「「ハクイ様の?」」
二人が身を乗り出す。その様子にイェンは罰が悪くなり目を背けた。
「あーいや間違った。あれは悪魔の親玉っつーか保護者っつーか、いやガキ大将みたいなもんで名前を"エルディアブロ"って言うんだよ。悪魔にしちゃ珍しく25年も生きてる」
「なんだ俺より1つ下か。てか"エルディアブロ"って……"悪魔"ってそのまんまの意味じゃんか、誰がつけたんだ?」
「ハクイ様だよ」
「ハクイ様?」
疑問を投げかける青年とは違いマールが「あっ」と声をあげた。
「なんだマール?」
「あの、実はハクイ様は個人的に悪魔の子を気にかけているんです」
「そうそう、何かとはた迷惑な事してくれるし、ハクイ様はあれでいてお優しいから悪魔の子が早くに亡くなってしまうのが見てられないんだよ」
「はい、それでいつも気を配っておいでで」
「だけど悪魔の子はエルディアブロの言う事しか聞く耳をもたない、オマケにエルディアブロってのは面倒な奴でさ、ハクイ様が上手いこと言いくるめて"同盟"と称し悪さをしない事を約束させたんだけど、あの悪魔は自分以外の奴には興味が無い、実質野放し状態なんだよ」
「それじゃあ同盟なんて称した意味もない」
青年が呆れて言い、イェンは肩を竦め、しばし妙な沈黙が流れた。
「まぁとりあえずあの悪魔がどんな奴なのかは分かった。けど肝心のなんの目的で来たのかがまるで分からない」
青年の言葉に二人も頷く。
「だったら直接聞いてみようじゃないか"本人"に」
「どうやって?」
「思うに、もし奴が人間の俺らに用があるってんなら今夜辺りまた来るはずだ」
自信満々に言う青年にマールがどうして?と聞く。
「勘だよ」
「勘って……アナタの勘は侮れないからなぁ」
マールは覚悟したように自身の腕の中で眠るリーベをしっかりと抱き直す。
「おいおい勘弁してくれよ。今日は魔王さまもハクイ様も城にいないんだ。これ以上何かあったら僕が困るんだけど」
「やっぱりな」
「はい?」
「おかしいと思ったんだ。これだけの事があったのに先日はすっ飛んで来た二人が全く顔を見せないなんて」
確かにとマールも頷く。
「イェンどうせまだ報告も出来てないんだろう? 丁度いいからもう少し黙ってろ」
「……何する気だよ」
「いいから俺に任せとけって」
青年は不敵に笑むと片目を瞑ってみせた。
2
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

ペットの餌代がかかるので、盗賊団を辞めて転職しました。
夜明相希
BL
子供の頃から居る盗賊団の護衛として、ワイバーンを使い働くシグルトだが、理不尽な扱いに嫌気がさしていた。
キャラクター
シグルト…20代前半 竜使い 黒髪ダークブルーの目 174cm
ヨルン…シグルトのワイバーン シグルトと意志疎通可 紫がかった銀色の体と紅い目
ユーノ…20代後半 白魔法使い 金髪グリーンの瞳 178cm
頭…中年 盗賊団のトップ 188cm
ゴラン…20代後半 竜使い 172cm

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義
大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。
帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか?
国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる