魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。

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第五章

水魚の交わり08

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 そうさとイェンは続ける。
 そもそも悪魔には親がいない。生き物が死んだ生まれ変りとも言われる彼らは、邪気を栄養分に育ったとは思えないほど美しい花から産まれるのだ。その時にはもう人間でいう四歳くらいの子供の姿をしている。
 そして物事の良し悪しの区別もつかない彼らは、好き勝手に生きるが故に子供のうちに様々な理由で死んでいく。

 例えば人間に悪さをはたらきそのせいで殺されたりと。

「おまけに人間は魔族と悪魔の区別なんかつかないだろ? 人間ではないけれど人間のような姿をした者を全て魔族だと思うんだから、悪さをしてるのをぜーんぶ魔族のせいにしやがる、こっちとしては頭が痛いったら~て、悪い。今この話は関係ないか」

 頭をかきながらそう謝ると、目の前の青年は思った以上に深刻な顔をしていた。

「……あーそれで、あの悪魔がなんなのかって話しなんだけど、ハクイ様の」
「「ハクイ様の?」」

 二人が身を乗り出す。その様子にイェンは罰が悪くなり目を背けた。

「あーいや間違った。あれは悪魔の親玉っつーか保護者っつーか、いやガキ大将みたいなもんで名前を"エルディアブロ"って言うんだよ。悪魔にしちゃ珍しく25年も生きてる」
「なんだ俺より1つ下か。てか"エルディアブロ"って……"悪魔"ってそのまんまの意味じゃんか、誰がつけたんだ?」

「ハクイ様だよ」
「ハクイ様?」

 疑問を投げかける青年とは違いマールが「あっ」と声をあげた。

「なんだマール?」
「あの、実はハクイ様は個人的に悪魔の子を気にかけているんです」
「そうそう、何かとはた迷惑な事してくれるし、ハクイ様はあれでいてお優しいから悪魔の子が早くに亡くなってしまうのが見てられないんだよ」
「はい、それでいつも気を配っておいでで」
「だけど悪魔の子はエルディアブロの言う事しか聞く耳をもたない、オマケにエルディアブロってのは面倒な奴でさ、ハクイ様が上手いこと言いくるめて"同盟"と称し悪さをしない事を約束させたんだけど、あの悪魔は自分以外の奴には興味が無い、実質野放し状態なんだよ」

「それじゃあ同盟なんて称した意味もない」

 青年が呆れて言い、イェンは肩を竦め、しばし妙な沈黙が流れた。

「まぁとりあえずあの悪魔がどんな奴なのかは分かった。けど肝心のなんの目的で来たのかがまるで分からない」

 青年の言葉に二人も頷く。

「だったら直接聞いてみようじゃないか"本人"に」
「どうやって?」
「思うに、もし奴が人間の俺らに用があるってんなら今夜辺りまた来るはずだ」

 自信満々に言う青年にマールがどうして?と聞く。

だよ」
「勘って……アナタの勘は侮れないからなぁ」

 マールは覚悟したように自身の腕の中で眠るリーベをしっかりと抱き直す。

「おいおい勘弁してくれよ。今日は魔王さまもハクイ様も城にいないんだ。これ以上何かあったら僕が困るんだけど」
「やっぱりな」
「はい?」
「おかしいと思ったんだ。これだけの事があったのに先日はすっ飛んで来た二人が全く顔を見せないなんて」

 確かにとマールも頷く。

「イェンどうせまだ報告も出来てないんだろう? 丁度いいからもう少し黙ってろ」
「……何する気だよ」

「いいから俺に任せとけって」


 青年は不敵に笑むと片目を瞑ってみせた。


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