106 / 168
第五章
水魚の交わり07
しおりを挟むどういう事だと青年が聞くと「実はこの部屋の結界、魔王さまとかじゃなくて僕がしたんだよ」とバツが悪そうに頭をかく。
そうそれは二人の部屋が用意された時のこと。イェンは寝具やら何やらの最終チェックをしていた。すると野暮用を済ませた上司が戻って来たのだ。
男とも女ともとれる中性的な美しさと品の良さ、この見目に騙される者は多い。
(あぁうん。さすが年間発行の魔族向け国際雑誌で“魔族★美形ランキング”とかってので名を轟かせ殿堂入りを果たしその名を見なくなっただけあるわ)
そうなのだ恐ろしい事にその昔100年近くランキング1位の座を独占し続けた白の魔族。伝説として語り継がれ少なくともこの国の魔族とこの雑誌の愛読者やミーハーな魔族の間では知らぬ者はいない。ちなみにイェンも毎回そのランキング8位内には入っている常連である。更に言うならイケメン部門では何故か女であるこの国の赤の魔族トップが毎回1位に上がるのが不思議で仕方が無いがまぁ今は関係ない事だ。
(うん、世の中間違ってるよなぁ。どう考えても僕の方が)
とりあえずそんな殿堂入り男、もといハクイにイェンは『問題無さそうですね』と声をかけられた。
『はい、あとは結界を施せば今すぐにでも』
『その結界ですがお前に任せます』
『はい。はい?』
いや何故自分に任せるのかとイェンは心の中で心底嫌そうな顔をした。だがその後に続くハクイの言葉で納得する。
『魔王さまにやらせると結界が強過ぎてわたくしでも入れなくなる。あれはいくらなんでもやり過ぎです。何よりイェンお前がこちらと自分の部屋とを行き来出来ないと困るでしょう』
確かにそうだ。結界の扱い方を自分でその時々に合わせ柔軟に対応出来たほうが都合がいい。
『かしこまりました』
と返事をすると、直ぐに邪気の影響を受けず尚且つ人間の気配を感知させない結界を施す。
これをする事によりどうなるかと言うと青年とリーベが邪気の影響を受けないのは勿論のこと、この部屋が殆どの者の意識から外れる。とは言え、そこに人間がいると分かっている者なら話は別だ。例えそれで何かあったとしても自分であれば直ぐに気付いて対処出来るとふんでいた。
だがその驕りが仇となったらしい。
昨日の晩から朝方近くまで疲労を強いられたイェンは本来なら結界の製密度をあげてから就寝するところを、きっと大丈夫だろうとそれをしなかったのだ。
「完全に油断してたよ。今の僕は魔王さまやハクイ様ほどの魔力は無いからさ、時々メンテナンスしておかないと結界の効力が弱まるんだよね。だからあの悪魔はこの部屋に気付いたんだと思う。ただ人間を狙って侵入したのか、それとも偶々侵入しようとした部屋がここだったのかは謎だけど」
なるほどと青年は頷く。
「昨晩は悪かった。あとさっき大丈夫だったか?」
「い、今更だなぁ……安心しなよ魔族は人間みたいにヤワじゃないからな」
イェンは大丈夫だと腕を回してみせる。その様子にホッとして、マールがおずおずと口を開いた。
「あ、あの。あの悪魔は何しに来たんでしょうか?」
マールの言葉に二人は「そこなんだよねぇ」「そこだよなぁ」と唸る。
「それにオレが知る限りでは悪魔は殆ど5歳から10代くらいまでの子供が12人と記憶しております」
その話に青年が驚く。
「なんだそれ悪魔は子供しかいないのか!? しかもそんな人数しか!? 親はどこ行ったんだ!?」
「あーそっか知らないよな。悪魔は花から産まれるんだよ。それも特別綺麗でデッカい花からな」
「は、花!?」
2
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?
ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。
ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。
そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。


例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる