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第五章
水魚の交わり07
しおりを挟むどういう事だと青年が聞くと「実はこの部屋の結界、魔王さまとかじゃなくて僕がしたんだよ」とバツが悪そうに頭をかく。
そうそれは二人の部屋が用意された時のこと。イェンは寝具やら何やらの最終チェックをしていた。すると野暮用を済ませた上司が戻って来たのだ。
男とも女ともとれる中性的な美しさと品の良さ、この見目に騙される者は多い。
(あぁうん。さすが年間発行の魔族向け国際雑誌で“魔族★美形ランキング”とかってので名を轟かせ殿堂入りを果たしその名を見なくなっただけあるわ)
そうなのだ恐ろしい事にその昔100年近くランキング1位の座を独占し続けた白の魔族。伝説として語り継がれ少なくともこの国の魔族とこの雑誌の愛読者やミーハーな魔族の間では知らぬ者はいない。ちなみにイェンも毎回そのランキング8位内には入っている常連である。更に言うならイケメン部門では何故か女であるこの国の赤の魔族トップが毎回1位に上がるのが不思議で仕方が無いがまぁ今は関係ない事だ。
(うん、世の中間違ってるよなぁ。どう考えても僕の方が)
とりあえずそんな殿堂入り男、もといハクイにイェンは『問題無さそうですね』と声をかけられた。
『はい、あとは結界を施せば今すぐにでも』
『その結界ですがお前に任せます』
『はい。はい?』
いや何故自分に任せるのかとイェンは心の中で心底嫌そうな顔をした。だがその後に続くハクイの言葉で納得する。
『魔王さまにやらせると結界が強過ぎてわたくしでも入れなくなる。あれはいくらなんでもやり過ぎです。何よりイェンお前がこちらと自分の部屋とを行き来出来ないと困るでしょう』
確かにそうだ。結界の扱い方を自分でその時々に合わせ柔軟に対応出来たほうが都合がいい。
『かしこまりました』
と返事をすると、直ぐに邪気の影響を受けず尚且つ人間の気配を感知させない結界を施す。
これをする事によりどうなるかと言うと青年とリーベが邪気の影響を受けないのは勿論のこと、この部屋が殆どの者の意識から外れる。とは言え、そこに人間がいると分かっている者なら話は別だ。例えそれで何かあったとしても自分であれば直ぐに気付いて対処出来るとふんでいた。
だがその驕りが仇となったらしい。
昨日の晩から朝方近くまで疲労を強いられたイェンは本来なら結界の製密度をあげてから就寝するところを、きっと大丈夫だろうとそれをしなかったのだ。
「完全に油断してたよ。今の僕は魔王さまやハクイ様ほどの魔力は無いからさ、時々メンテナンスしておかないと結界の効力が弱まるんだよね。だからあの悪魔はこの部屋に気付いたんだと思う。ただ人間を狙って侵入したのか、それとも偶々侵入しようとした部屋がここだったのかは謎だけど」
なるほどと青年は頷く。
「昨晩は悪かった。あとさっき大丈夫だったか?」
「い、今更だなぁ……安心しなよ魔族は人間みたいにヤワじゃないからな」
イェンは大丈夫だと腕を回してみせる。その様子にホッとして、マールがおずおずと口を開いた。
「あ、あの。あの悪魔は何しに来たんでしょうか?」
マールの言葉に二人は「そこなんだよねぇ」「そこだよなぁ」と唸る。
「それにオレが知る限りでは悪魔は殆ど5歳から10代くらいまでの子供が12人と記憶しております」
その話に青年が驚く。
「なんだそれ悪魔は子供しかいないのか!? しかもそんな人数しか!? 親はどこ行ったんだ!?」
「あーそっか知らないよな。悪魔は花から産まれるんだよ。それも特別綺麗でデッカい花からな」
「は、花!?」
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