魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。

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第五章

水魚の交わり03

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 マールはきょとんとした。

「え? う、うんそうだね。皆そう言うから知ってるよ」

「そっかそうだよなぁ。流石にもうわかってるよな」

 何処かホッとしたように青年はマールの肩に置いた手から力を抜く。

「ここに来るまでは知らなかったから最初は戸惑ったよ。魔族が4種族存在するって知った時は」

 あぁそうだろうと青年は頷く。何しろマール達を育てたのは人間である自分達で、自分達にはその知識がなかった。教えようがなかったのだ。

「でも言われてみればえんにいた子は皆、黒髪の子は瞳が赤くて、白い髪の子は瞳が紫で、赤髪にみどりの瞳は女の子だったなぁって、そしてオレは灰色の髪に青い瞳。不思議と人間みたいにバラバラじゃなかったよね。アル様みたいに藍色の髪の子なんていなかったし」
「あぁそうだ……これは俺達の責任だな。俺達が何も知らなかったからお前達も何も知らないまま育っちまった。すまない」

 他の子ならまだいい、けどマールは他の種族と違い特殊な性を持つ灰の魔族。自分は男だと思って育ったマールのことだ、余程戸惑ったに違いない。

 そう思う青年は思い詰めた顔でマールを抱き締めた。

「え、えーと……お、お兄ちゃん? 」

 急にどうしたのかとマールは戸惑いながらも軽く抱き締め返す。

(にしても男でも女でもなく、男の役も女の役にもなれるって……いったいどう言う事なんだ? 性別が無いって事か? いやイェンは灰の魔族って性別だって…………駄目だ人間の俺にはサッパリ理解出来ない)

「あのー」
「あぁいい何も言うなマール、正直俺もまだ頭がついていかないよ」
「へ? 何が」
「何がってお前……」

 顔を上げてマールを見る。するとその困った表情に青年は違和感を覚えた。

「…………まさか、いや」
「え?」
「マールお前、灰の魔族について述べてみろ」
「えぇ?」
「いいから」
「えーと灰の魔族は他の魔族より寿命が短くて珍しい存在……」
「それで?」
「青い瞳で灰色の髪……」
「他には?」

「え? 他にもあるの?」

 無垢な瞳で驚いたように瞬く。

「……………………」
「お、お兄ちゃん?」


(知らないのか!)


「は、ははは、何やってんだよハクイ様、そりゃないよ。自分で連れて来たんだからそこは責任持ってさぁ」

 青年はマールから離れてテーブルに倒れ込むように項垂れる。

(どうする? 教えるか? 教えた方がいいか? いや絶対教えるべきだ。マールはもう14歳なんだ知っておいた方が絶対いい。だって、灰の魔族って……妊娠する可能性があるんだろ? でも果たしてこのタイミングで本当にいいのか??)

「な、なんか分からないけど、見た事ないくらいにお兄ちゃんが狼狽えてる……?」

 その様子にマールが困惑していると、何かに気付き突如青年が勢いよく起き上がる。

「ま、マールお前今何処で寝起きしている?」
「へ? えっとえっと下働きの人専用の」
「そこに男はいるのか?」
「へ? 男しかいないけど?」
「それは大丈夫なのか? なんともないのか? 湯浴みはどうして」
「大浴場で皆と一緒に」

「ハクイ様!!」

「なんでそこでハクイ様!?」

「ちょっとハクイ様探してくる」
「えぇなんでなんで!? て、ダメだよ部屋から出たら! お、お兄ちゃんってば! い、イェン様起きて! 早く起きて下さーい!」 

 バアアアアンンン!!!

 隣の部屋に繋がっている扉が乱暴に開いた。

「ああああもううるっっっさい!!」

「イェン様!」

「朝方やっと寝かし付けに成功したってぇーのに、リーベが起きちまったらどーしてくれ……って」


 寝起きですと言わんばかりの寝汚い格好でズカズカと入って来たイェンの眼に映ったのは、必死に青年の服を引っ掴んでいるマールと、今にも部屋から出ようとする青年

そして


「おい、ちょっと……リーベは?」


「「え?」」



空になったベビーベッドだった。






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