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第四章
塞翁が馬25 end
しおりを挟む「「た、助かった」」
魔王とイェンがほっと息をつく。
「い、いったいなんだったんだ?」
一人青年だけが何がおきたのかわかっていない。
「ハクイ様は女扱いされるのが心底嫌いなんだよ。さっきのママ発言だって勿論アウト、流石に赤ん坊相手には怒れなかったみたいだけど」
緊張の糸が切れたように、イェンはリーベを抱き直しながら椅子に深く腰をおろした。
「なにはともあれ大事にならなくて良かった」
「えぇ、ホントにそうですね」
「でもハクイ様かなりダメージくらってたっぽいですけど」
青年がハクイが出て行った扉を見る。
「何もない事を祈ろう」
「ホントそうですね。誰も犠牲になりませんように」
(わけがわかんないなぁ)
「まーお」
するとリーベがまた話し出す。
それに気付いたイェンが持ち上げて二人に尋ねた。
「えーと、マオって誰ですか?」
青年は隣にいる魔王を指す。
「どうにも私の事らしい」
「はーそうなんですか」
と言いながらイェンは何故かリーベを青年に返すと「そんじゃあ僕はもう帰ります。あんまり喧嘩しないで下さいよ」と言って隣の部屋に戻って行った。
「……」
「……」
なんとなく間があいて、横目にチラリと互いを見る。
「まぁとりあえず、魔王さまは今日からマオって事で」
「あ、あぁ別に構わんが」
「へへ」
青年が魔王に手を差し出す。
「そんじゃあ宜しく マオ様」
「あぁこちらこそ宜しく頼む。ロワ」
二人でガッチリと握手をかわして
「…………いややっぱりなんか言い慣れないので普段は魔王さまにしときます」
「おいおい」
ふと見るとさっきまで元気にはしゃいでたリーベが青年の腕の中でスヤスヤと寝息をたてている。
その頭を魔王が撫でた。
「そう言えば魔王さま」
「ん? なんだ?」
「赤い花の種がどうのって言っていましたけど、結局それ、どうなったんですか?」
「……赤い花……種」
「その花はちゃんと咲きましたか?」
一瞬なんの事か分からなかったのか直ぐには返事せず、けれどあぁと言って窓の外を指す。
「そこの庭に咲いている。今日はもう遅いからな明日の朝、窓を開けたら下を見てみるといい」
「うん、そうしてみます」
「……《リトス》と名付けた。花をくれた彼女の名を」
「リトス……不思議ですね」
「何がだ?」
「あっちでは毎年空色の綺麗な花が咲くんですけど、その花は《レーヴ》って言うんですよ」
魔王は窓の外を見たまま「そうか」とだけ答えた。
――翌朝。
青年が窓を開け下を見ると、可愛らしくもとても力強い真っ赤な花の庭園が。
「リトス……か」
青年はポツリとその名を呟いた。
―― 『塞翁が馬』(人間万事塞翁が馬) ―― end
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