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第四章
塞翁が馬11
しおりを挟む「なんで! どうして……!!」
暗闇の中、ただ無我夢中で森の中を走った。
草木に引っ掛かり怪我をするのも気にせず。ただただもっと遠くへ。
『私が死んだら、森の向こうへ』
ダメだ。あの魔族達は《王の命令》で俺を殺そうとしている。つまり《魔王》が俺が死ぬ事を望んでいるんだ。
そんな所へのこのこと行く訳にはいかない。
「くそ、いったい何がどうなっているんだよ! 父さんっ」
父さんを置いて来てしまった。
父さんを、父さんを。
「俺は、俺はどうしたら!」
『お前は、人間ではない』
本当は、本当はわかっていたんだ。
自分が人間ではないと言うことを、父の忠告を無視して、教えて貰った森の道を外れた時から。
いや違う。
もっと前から、父が体調を崩すようになったあの頃から、わかっていた。
そうだよ。わかっていたんだ。父が俺から距離をとるようになったのも、町へ出るなと言ったのも、何故なのか全て。
だけど、受け入れたくなかった。自分が人間ではないと、父を苦しめている原因が自分であると、自分の存在が父を病に追い込んでいると
(自分のせいだって、受け入れたくなかった!)
『お前は私の《希望》だったよ』
「違う!」
俺は《希望》なんかじゃない。
俺は父を、ただ苦しめている存在だった。
知ってるんだ。心配で何度か仕事に向かった父の様子を見に行ったから。
父は家から離れれば《俺》から離れれば、体調を崩したりなどしていなかった。
知ってたんだ。全部。
だけど
『お前は、人間でいたいか?』
だけど
『お前は今が、幸せか?』
だけど俺は人間として、父の息子として、そうでありたかった。
《今》が壊れてしまうのがただただ恐かったから、だから
『それは勿論。当たり前じゃないか』
俺が魔族だから、俺のせいで父が、父が
「俺のせいで……!」
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