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第四章
塞翁が馬10
しおりを挟む黒ずくめの見知らぬ者達が、我が物顔で家にぞろりと上がり込む。
「な、なんだお前達!こんな夜更けに、いったい俺の家になんのようだ!」
見るのは初めてだった。まるで人間と変わらないその姿。だが、俺には分かる。わかってしまう。
黒いローブを身にまとい、俺を取り囲む怪しげな《魔族達》
「この者で間違いないな」
「は、確かかと」
「そうか。ならば」
魔族の男が一人、剣の切っ先を俺に向ける。
「我等が王の命により、悪いが貴様には死んでもらう」
一瞬何を言っているのか理解出来なかった。
王?
何処の?
魔族の?
何故俺が?
後ろからクイと軽く服を引っ張られ、まさかと身体が硬直する。もう目覚めないかと思った。けれど確かに父の掠れた声が耳に届く。
その言葉に絶句した。そんな事は出来ないと、今直ぐ後ろを振り向き言いたかった。
けれどこの魔族達に気付かれる訳にはいかない。
「フン、少しは抵抗するかと思ったが、随分と大人しいな」
男が剣を振り上げる。
「ユミト!」
父の声と共に、寝台の窓を身ごとぶつけてぶち破る。
硝子の激しく割れる音が耳に響き、振り返れば男の腕を押さえつけている父の姿。
「父さん!」
「構うな行けぇ!」
父の張り上げた声に弾かれたように駆け出す。
「生きて生きて生き延びろ!」
「くそっ逃げたぞ! 追えーーーー!」
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