上 下
74 / 130
第三章

名は体を表す32 end.

しおりを挟む


――ねぇ。

ねぇってば。


薄れ行く意識の中で、鈴の音が鳴るような声が聞こえた。

『……貴方、こんな所でどうしたの?』

うっすらと、キラキラ輝く光が見える。
お日様に照らされた長い、金の髪。
ふわりとしたその髪に顔をうずめれば、きっと暖かく、柔く、気持ちがよさそうな気がする。
無意識に手を伸ばして、その髪をそっと掴み、その中に顔をうずめる。
日の光を浴びたそれは、やはり暖かく、とても良い匂いがした。
花のようなお日様のような、軽く息を吸い込むとほっとして、また眠たくなる。

『あらだめよ。眠ったりしちゃ』

空と同じ色をした清んだ瞳が僅かに揺れた。
きっと天使だ。
そうでなければ、こんなに可憐な者がこの世に存在する筈がない。
そう天使、天使がこぼれ落ちそうな瞳でこっちを見ている。
と言う事は……そうか、《俺》は。

『どうして微笑むの?』

自分は笑っているのか?分からない。
わからないけどただ。


『ダメよ眠っちゃ。……ねぇお友達になりましょうよ。貴方のお名前は?』

俺?

俺は……

もう終わったんだ。名前なんて……。



『そうだな。強いて言うなら……魔王に、なりそこねた男、かな』





―― 名はたいを表す。end. ――

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

魔王様の小姓

BL / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:40

実家に帰らせていただきます!

BL / 連載中 24h.ポイント:604pt お気に入り:40

氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います

BL / 連載中 24h.ポイント:29,047pt お気に入り:5,250

本物勇者に捨てられて次席勇者に拾われた俺

BL / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:37

竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

BL / 連載中 24h.ポイント:397pt お気に入り:311

処理中です...