魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。

文字の大きさ
上 下
72 / 168
第三章

名は体を表す30

しおりを挟む


「ってあれ?間違った。灰の魔族の子供か」


何が間違ったのか。突然現れたおさげ髪の男は「失礼しました。この子供も賛成だと言っています」と訂正する。

ただお使いから帰ってその報告にハクイを探して来ただけのマールは、状況について行けず目を白黒させ、助けを求めてハクイを見れば、眼で「本当か?」と聞かれる。
「なんの事だか」と近付いて来るハクイに軽く首を振った。

「どうやら巻き込まれてしまったようですね。わたくしもお前も」

と言ってため息を一つ。
でも直ぐに気を取り直して「何事もありませんでしたか?」と聞かれた。
お使いの事だ。

「必要な物はほぼ買い揃えて来ました。暫くはこれで問題ないかと、ハクイ様のお陰です」
「わたくしは何もしてませんよ。多少心配でしたが、その必要もなかったようです」

そう言ってハクイは微笑む。
そんなハクイにマールは少し言いずらそうに口を開いた。

「ハクイ様、あっちで悪魔の子達をみました」
「…………なんですって?まさか」
「その、混乱に乗じてお店の商品を盗んで」
「……なんて、危険な事を」

ハクイは口許をおさえる。

「わたくし達だけならいざ知らず、人間にまで、あれほど口煩く言ってもまだ」
「あ、あのでも、とりあえず誰にも気付かれず逃げて行きました」

本当はアルデラミンには気付かれてしまったが、見逃してくれたし何よりハクイが思った以上に深刻な顔をしているので言わなかった。
気まずさを感じたマールは話題を変えようと、気になっていた目の前の状況を聞いてみる。
するとハクイはまぁお前なら見ていたらわかるでしょうと、ガッツポーズを掲げる青年と、少し悔しそうに落ち込む魔王の方に視線を向けた。

「よっしゃあ!勝ったああ!!」
「くっまさかこの私が負けるとは」

なんだか分からないがどうにも話が纏まったらしいと、長々と付き合わされていた者達はみなホッとした。

「何はともあれ決まったようで良かった」
「あぁそうだな。いつまで続くかと思うたが、結果良かったんじゃないか?」

それもこれも機転をきかせ、さっさと終わらせたイェンのおかけだ。

「魔王さまワシらはそろそろ下がらせて貰いますぞ」
「あ、あぁすまなかったな妙な事に付き合わせて、みな下がってよい」
「いえ、では失礼いたします」

ぞろぞろと魔王達以外の者が部屋から出て行く。
そんな中、青年は赤ん坊を抱き上げ、内緒話でもするように言った。


「宜しくな、《わたし》のリーべ」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

紹介なんてされたくありません!

mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。 けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。 断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で…… だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?! ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に? 攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

処理中です...