魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。

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第三章

名は体を表す27

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「いやいやいや、確かに皆で名前決めましょーよっていいましたけど」


案内された部屋に入ると、自分達を待っていたその場の人数に驚いた。
自分やイェン、ハクイ達を除いても十人以上がその場にいたからだ。

「いくらなんでも多すぎでしょーが魔王さま」

青年が冷ややかに見る。

「す、すまん無下むげに出来なくてな。まぁいいじゃないか」
「あのさー人数が多すぎると決まるものも決まらな」

「おぉおぉ可愛いなぁ」
「これが人間の赤ん坊か!ちっさいのう」
「次は私だ私に抱かせてくれ!」

やいのやいのと似たような格好をした魔族の連中があの赤ん坊を取り巻いている。

「はいはい皆さん落ち着いて下さい。見世物じゃないんですよ。お人形でもありませんからね」

そんな魔族達にハクイが呆れたように声をかける。

「まぁみな嬉しそうだし許してくれないか」

(……無下に出来ない相手ねー)

魔王が苦笑するのを見、そして赤ん坊を抱き上げる魔族達を見る。
改めて身なりやら面立ちやらなんやら見ると成程、合点がいく。
差し詰め国を担う上位の者達と無駄に歳だけを積み重ね口煩いだけのジジィが大集合と言ったところか。
仕方無いと溜め息をついて

「皆さんちゅうもーく!!」

いきなり大声でそう言い、自然と視線が青年に集まる。全員の視線が自分に向いたと分かると青年は続けた。

「実はその子名前がまだないんです。ですから今から皆でその子の名前を決めたいと思います。異議のある方はいますか?」

暫し沈黙した。まぁそれもその筈、なにせ全く知らない者が、いきなり場を仕切りだしたのだ。そりゃあ固まるだろう。
けれど

「なんだそうだったのか、私は構わないぞ」
「そうですな。子に名など、考えた事もなかったですが」
「いいじゃないか」
「あぁ私達で考えようじゃないか」

と、徐々にその声は大きくなり、話は纏まったようだった。

「ちなみにその子女の子ですからその事忘れずにお願いします。それじゃあ始め!」

青年の声を合図にみながそれぞれに考えを巡らす。

「おい、イェン」

赤ん坊を取り巻きから預かって、事のなり行きを見守ろうとしていたイェンに声をかけた。

「なんだよ」
「その子は俺が見る。お前は紙となんか書くもん出して記録しておけ」

赤ん坊を青年に預けながらイェンが「はぁ?」と言う。

「赤ん坊の名前を決めるんだ。普通記録をとっておくもんだろ」
「えぇそう言うもんか?」
「この場合そう言うもんだ」
「この場合?」
「少なくとも俺のとこではそうなんだよ。あとどんな名前が上がったか忘れちまうとダメだからな」
「ダメなのか?」
「あとでやっぱりあれがいいってなると困るだろ?これだけ人数がいるんだ。全部覚えてられないしな」
「あっそう。まぁいいけど」

イェンは何処から取り出したのか紙と万年筆を手にした。

「お前もなんか考えろよ」
「は?僕もかよ」

と驚きながら、イェンは青年の腕の中でこっちを不思議そうに見ている赤ん坊と目があった。
くりくりとした瞳がなんだか自分に期待している気がして、どうしたもんかなと思う。

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