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第三章
名は体を表す26
しおりを挟む「まぁ正直彼女の言う事の方が正しいでしょう。果たしてこの環境化で、人間の子をなんの不自由もなく健康的に育てられるかと言ったら、はいそうですとは決して言い切れませんから、何しろ自分達魔族の子ですら泉に預けるくらいです。やはり帰した方が」
「それで?また捨てられでもしたらどうする?」
「それはそうですが、あの青年に預ければ、彼がなんとか良い里親を見付けてくれる可能性もありますよ」
「確かにそうかも知れない。だがなハクイ、私はもう」
魔王が何か続けようとしたが、ハクイは立ち止まり後ろを振り返った。
「皆さん、此方の部屋で少し待っていて下さい。今連れて来ますので」
大きな浅蘇芳色の扉を開け、誘導する。
「なんだ部屋まで連れて行ってはくれんのか?」
「わざわざ呼んで来なくとも、私達が行けばそれでよかろう?」
「いいえ、皆さんが足を運ぶ程の事ではありません。これだけの人数が押し掛けられる程広い部屋ではないですし、大人しくこの部屋で待っていて下さい。それが嫌と言うのであれば今すぐ帰っていただきます」
さぁさぁと急かされ、文句を言いながらも皆渋々と中へ入っていく。
一通り入るのを確認して、さてととハクイは魔王に向き直る。
「場所を教えさえしなければ、あれらの部屋を軽々しく出入りする者もいないでしょう。どうです問題がおきる前になんとかなったんでは?」
「ん?え?あ、あぁそうなのか?」
その刺々しい言いように。
何故急に不機嫌にと思ったが、先程自身が口にした言葉を思いだし、あれのせいかと少し背筋が寒くなった。
「まぁその場しのぎに過ぎませんが、それでは魔王さま。わたくしは二人を連れて参りますのであとは頼みます。聞いてますか?わかりましたね?」
「う、うむ!」
ハクイはそう言うと足早にその場をさった。
その背を見届けていた魔王は思わず頬をかく。
どうにも『お前がなんとかするだろう』等と言った事がいけなかったらしい。
「うーん。アイツ任せの発言がまずかったか」
悪気はなかったのだが、寧ろ信頼している意味で、とかなんとか言いながら魔王も部屋の中に入って行った。
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