魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。

文字の大きさ
上 下
67 / 168
第三章

名は体を表す25

しおりを挟む

「あ、あぁすまん。どうした?」

魔王と呼ばれた男は、隣を歩く白い髪の綺麗な男にそう言った。

「全く貴方と言う人は、どうしたじゃありませんよ。先程の会議でもぼーっとして、しっかりして下さい」
「う、すまん」

小声でそんなやり取りをし、更に続ける。

「ところで、本当に良かったんですか?」
「何がだ?」
「赤ん坊の事です。アッサリ話してしまわれて」
「あぁ」

先程行われた会議で、ほぼ議題が出揃いお開きにしようとしたところ、中でも古株の一人が口を挟んだ。
内容は人間の赤ん坊の噂は本当なのかと言う事だ。
他の者も気になっていたのだろうみな興味なさげを装いながら、しっかり耳を傾けていた。

「構わん。あちらもあの場を借りて話に上げたと言う事は何かしらの確信を持っての事だろう。こちらもへまをやらかしたしな。変に隠したところで不信感が募り、不穏な動きに繋がりかねん。ならば話してしまった方がてっとり早い」
「確かにあの人間が結界を出てしまったのは流石に予想外でしたからね。もはや仕方ないでしょう。ただ」
「まぁお前の言いたい事はわかる」

二人は歩きながら後ろを一瞥した。
そこには先程会議を共にしていた者達がぞろりと顔を揃え二人の後をついて来ている。
しかもみな何処かウキウキとした様子だ。

「いやぁ楽しみだな~赤ん坊なんていつぶりだ?」
「いつぶりも何も私は人間の赤子を間近で見るなんて初めてだぞ」
「はっはっはっ違いない違いない。魔族の赤ん坊でさえ、見ることなど殆どないからな」
「全くもってお前達浮き足立ち過ぎじゃ」
「っと言いながらジィが一番気になっている癖して」

ワッハッハッと多いに盛り上がっている。

「物珍しい気持ちも分かりますが、まさか見たいと言い出すとは」
「まぁいいじゃないか。少なくとも歓迎はされているようだぞ。邪険にされないだけいい」
「全く揃いも揃ってお爺ちゃんなんですから」
「子供好きで良かったじゃないか」
「まぁそうですが、あまり多くの者が軽々しく出入りするようになったら困ります」
「まぁな。だがそうなったらお前がなんとかするだろう?問題ない」
「なんですかそれ。……それにしても」
「ん?」
「やはりついて来なかったなと思いまして」
「……あぁ確かに、否定的だったからな」

緑の瞳に赤毛のポニーテール、真のある、けれども色っぽい鋭い目線に男勝りな喋り方。
その姿を思い出して、魔王が一瞬だけ顔をしかめる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

紹介なんてされたくありません!

mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。 けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。 断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

処理中です...