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第三章
名は体を表す25
しおりを挟む「あ、あぁすまん。どうした?」
魔王と呼ばれた男は、隣を歩く白い髪の綺麗な男にそう言った。
「全く貴方と言う人は、どうしたじゃありませんよ。先程の会議でもぼーっとして、しっかりして下さい」
「う、すまん」
小声でそんなやり取りをし、更に続ける。
「ところで、本当に良かったんですか?」
「何がだ?」
「赤ん坊の事です。アッサリ話してしまわれて」
「あぁ」
先程行われた会議で、ほぼ議題が出揃いお開きにしようとしたところ、中でも古株の一人が口を挟んだ。
内容は人間の赤ん坊の噂は本当なのかと言う事だ。
他の者も気になっていたのだろう皆興味なさげを装いながら、しっかり耳を傾けていた。
「構わん。あちらもあの場を借りて話に上げたと言う事は何かしらの確信を持っての事だろう。こちらもへまをやらかしたしな。変に隠したところで不信感が募り、不穏な動きに繋がりかねん。ならば話してしまった方がてっとり早い」
「確かにあの人間が結界を出てしまったのは流石に予想外でしたからね。もはや仕方ないでしょう。ただ」
「まぁお前の言いたい事はわかる」
二人は歩きながら後ろを一瞥した。
そこには先程会議を共にしていた者達がぞろりと顔を揃え二人の後をついて来ている。
しかも皆何処かウキウキとした様子だ。
「いやぁ楽しみだな~赤ん坊なんていつぶりだ?」
「いつぶりも何も私は人間の赤子を間近で見るなんて初めてだぞ」
「はっはっはっ違いない違いない。魔族の赤ん坊でさえ、見ることなど殆どないからな」
「全くもってお前達浮き足立ち過ぎじゃ」
「っと言いながらジィが一番気になっている癖して」
ワッハッハッと多いに盛り上がっている。
「物珍しい気持ちも分かりますが、まさか見たいと言い出すとは」
「まぁいいじゃないか。少なくとも歓迎はされているようだぞ。邪険にされないだけいい」
「全く揃いも揃ってお爺ちゃんなんですから」
「子供好きで良かったじゃないか」
「まぁそうですが、あまり多くの者が軽々しく出入りするようになったら困ります」
「まぁな。だがそうなったらお前がなんとかするだろう?問題ない」
「なんですかそれ。……それにしても」
「ん?」
「やはりついて来なかったなと思いまして」
「……あぁ確かに、否定的だったからな」
緑の瞳に赤毛のポニーテール、真のある、けれども色っぽい鋭い目線に男勝りな喋り方。
その姿を思い出して、魔王が一瞬だけ顔をしかめる。
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