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第三章

名は体を表す19

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「まぁマール!マールじゃない!」

使い込んだ物干し竿の前で、沢山の洗濯物を干し終えた中年の女性が屋敷の広い庭の入り口から入ってくる少年の姿を見つけ、大急ぎで駆け寄った。

「あぁマールまさかまた会えるなんて。この世に奇跡があるとしたら正に今この瞬間の事だったのね。今まで何処にいたの?戻って来てくれて嬉しいわ」
「ソフラさん。オレも会えて嬉しいけど、戻って来た訳じゃって、ちょっちょっと待って!」

腕を思いっきり広げそのふくよかな胸に抱き止めようとする彼女から逃げ、マールは横にいたアルデラミンの後ろに隠れる。

「あらアル様もご一緒で?珍しいですね此方まで来られるなんて。しかもいつもとは違う装いで、何か訳ありですか?」
「ソフラすまないが」

「え?マール兄ちゃんが帰って来たの!?」「ホントだマールだ!マール兄ちゃんだ!」「アル様もいるよー!」「やだ本当だわマールよ!皆マールが帰って来たわ!帰って来たのよ!」

ソフラの歓喜の声に気付いた小さな屋敷の、いやえんの子供達や、ソフラのようにエプロンドレスを着た女性が庭や建物のあちこちから顔を出し、たちまち二人は取り囲まれてしまった。

「わぁ待って待ってオレに触ったら危ないんだってば!皆具合が悪くなって倒れてしまうよ」

迫る子供達から逃れようと手で押しとどめるような仕草をしながらマールは後退る。
その姿を見てソフラは何かに気付いたように寂しげな顔をする。

「ねぇねぇアル様アル様今日は遊んでくれるの?」
「アルさまお土産ないの!お土産!」

赤毛にみどりの瞳の少女がアルデラミンの服を摘まんで引っ張る。
するとそれに便乗して他の子供達も彼にまとわりついた。

「あぁこれだから子供は苦手なんだ。ソフラ頼む何とかしてくれ、それと部屋を一つ頼む」
「畏まりました。ほらほら皆、二人は大事なようがあって来たのよ邪魔しちゃ悪いわ」

ソフラの言葉に子供達は不満をもらしながらも、エプロンドレスの女性と共に各々の場所へと戻って行った。

「さぁさぁ二人ともこちらへ、今お茶とお菓子を持って来ますので少々お待ち下さいね」

ソフラに案内され、屋敷のある一室に通された。
それは彼女達が普段使っている休憩室で、今だけ自分たちに空けてくれるらしい。
使い古した木のテーブルに、少し軋む椅子に腰掛け、こじんまりと落ち着いたその空間で、互いにテーブルの向こうの相手を見詰める。
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