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第三章

名は体を表す15

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「フンッなんじゃその目は。そんなにこの老いぼれがこんな所に住んでるのがおかしいかい? 言っとくがな先祖代々からこの辺りを守ってるんじゃ、今更お前のような若いもんに何かにと言われる筋合いはないわい。さっさと行け!」
「わわすみません!」
「待たんか!」

慌てて背を向けると何故か引き止められた。

「は、はい?」
「最近は魔族どもが現れては店を荒らしたりと治安が悪いからの。お前さんも十分気を付けな」
「は、はい。えっと気を付けます。ご忠告有り難うございました」

そう言って今度こそその場を離れる。

(うぅ、ツイてないな~。やっぱり昨日みたいに泉の方から出るべきだった。……それにしても“魔族”って、そんな事……)

正直、老婆の言った事は信じがたい。
基本魔族は人間にちょっかいを出す事はないのだ。
人間は邪気の無い土地で、魔族は邪気のある土地で、上手いこと住み分け出来ている。
それに魔族が不用意に人間に近付けば、人間は邪気にあてられ死んでしまう。それは魔族の間では常識だ。
そもそも弱くて直ぐ噛みついてくる人間に近付こうとはまず思わないし、様々な誤解から人間から見た魔族の印象は頗る悪く。出来る事ならイメージを払拭したいと思っているくらいなわけで……。
だいいち悪さをしたのが魔族と断定出来るのもおかしい。自分達は見た目だけなら人間となんら変わりなく、今のように老婆がマールを魔族だと気付かないのが普通だ。

となると考えられるのは見た目で直ぐに分かる“悪魔”の方だろう。

人間は悪魔と魔族を一緒くたに考えている節がある。それにマールには少し心当りがあった。となるとますますその線が怪しい。

(あの子達……。前にも散々怒られてた気がするけど、やっぱりこの事はハクイ様に伝えておくべきだよね)

悪びれもなく唇を尖らせる悪魔の子達と、淡々と説教をするハクイの姿を思い浮かべながら、街の方に出た。
お目当ての店の近くまで行き、マールは手の平を見詰める。

(うん。今日は大丈夫)

来る前にハクイに約束通り結界をはって貰ったのだ。全身でなくていいのかと聞かれたが、大きな結界は魔力を沢山使って大変だと同僚から聞いていたので手の平だけにして貰った。
その手をマールはしっかりと握り締める。

「よおし気を付けて行くぞ! まずは」


「キャアー誰か助けてー! 魔族よ! 魔族が現れたわああ!!」


(…………まだ、何もしてないんだけど)



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