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第三章

名は体を表す12

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「……と、言うと、あの子守りに連れて来た人間と赤ん坊の事でしょうか?」

「そうです。ここではあの人間一人で出来る事に限りがある。確かお前の故郷では人とそれなりに交流があったはずです」

あぁなるほど、つまりは人間慣れしているからと言うことだ。

「それに先程、赤ん坊に「またね」と言っていましたね。どうせ後で様子を見に行くつもりだったのでしょう?」

図星だ。いやまさかそこをつかれたか。

「どうせですからあの者達の世話を頼まれて下さい。お前ならあの人間とも上手くやれそうですし、これも勉強です」
「勉強……ですか」

それは自分がここにおかせて貰っている理由で、断るすべもなく、話を承諾した。

その時にハクイは言ったのだ。

「連れて来ておいてこんな事を言うのもなんですが、あの人間の男、どうにも一筋縄ではいかないようです。まぁ害はないと思いますが事情も説明せずいきなり連れて来てしまいましたし、よくみてやりなさい」

と、立ち去る間際「それに……何か」と呟いていたのも気になる。

いったいどう言った意味なのか。
他から聞いた話によれば、ほんの少し赤ん坊と二人にしたところ、結界から出てしまい死ぬところだったらしい。
おまけにせっかく結界で人間の気配を消していたのが周囲に駄々もれ状態となり、魔王が人間を囲っていると言う噂が現実味を帯びた。
殆どの者が野次馬根性を浮わつかせるだけだが、心配した魔王が自室に呼んだと言うから驚きだ。
確かに魔王さまの傍なら何処で誰に護られるより安全かも知れないが、流石にそのまま居座らせるのは周りに示しがつかないと、ハクイが翌日には別の部屋に移動させる事をしっかり約束させたとか。

(一筋縄ではいかないが、害はないか)

確かに目の前にいる青年は妙なところがあるとは言え、害がある者のそれではない。
それでもまだ考え込むその姿は何かあるように思わせる。

(色んな意味でよくみていろってとこかな)

ふと青年と目があった。なんだよ? と目で聞いて来る相手に「いや、ちょっと見とれてて」と誤魔化すと「おいおい勘弁してくれよ」と嫌そうな顔をする。

「なんだよこんないい男に見とれられて悪い気はしないだろ?」
「よく言う。俺の方がまだマシだ」
「それこそよく言うよ」
「なんだと?」

軽く笑って冗談を言い終えると今度は少し真面目に「で、何考えてたの?」とイェンが聞くと

「そうだな。……己の無知さを恥じ、これからどうするべきかとね」


青年は聞かれるのが分かっていたように微笑した。


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