魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。

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第三章

名は体を表す11

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「こんなキラキラしたもんジャラジャラぶら下げてたら危ないぞ。引っ張られたら痛いし、この子が間違って口にしても良くない」
「あのさ。そのジャラジャラって表現酷くない?他にもっと言い方あるだろ?」
「ない」
「はぁ。しょーがないなぁ取るかぁ。これ結構気に入ってんだけどなぁ」

ようやくイェンの手が離れて行くと、赤ん坊は満足そうな顔をした。イェンはやはりそんな赤ん坊には気付かず、耳飾りを外すと「君が今よりもっと素敵な女性になったら、これよりいいのを贈るよ」と言って、服の内側にしまう。

「それで、灰の魔族が珍しい理由って? 他にもあんだろ?」
「あぁうん。灰の魔族はさ短命なんだよ。もちろん人間や他の種族に比べたらそりぁ長生きだけど、成人するまでに大体が亡くなっちまうんだよな」

だから珍しいんだとイェンは話を終えた。

「なるほどな」

そう言って青年はまた黙りこむ。
イェンはその姿を頬杖をつきながら目の端でチラッと眺めた。

(いったい何考えてるんだろうな。この人間)

一見冴えない農民といった成りだが、その仕草や態度に違うものを感じ、イェンは不思議だった。
しかも怯えも拒みもせずに、この状況をあっさり受け入れ、馴染んでしまっている。

(帰りたいと思わないのか?)


イェンは昨日、二人の世話を命じられた時の事を思い出す。
数日間ほぼ寝ずに赤ん坊の面倒をみていたイェンは、死んだように寝台に自分の身を沈め一度も起きる事なく眠っていた。
そこにお呼びがかかったのだ。
自分を呼んだ上司に心の中で密かに悪態をつき、まだ眠い頭と体を引き摺って、僅かな灯りを頼りに暗闇の中を進みその場に行くと、真っ白な長い髪に真っ白な服を纏った綺麗な顔の男が待っていた。
相変わらず美人だなと皮肉めいた言葉を呑み込んで、ハクイ様と声をかける。
するとその魔族はイェンの方を振り向いた。
その動きさえも美しく洗練されているのだから、さっきまで思っていた文句が何処かに吹っ飛ぶ。

「お呼びでしょうか」

と言いながら、まぁ呼んだよな。だからわざわざここまで来たんだしと、どうでもいい事を思って。

「実はお前に、あの人間の世話を頼みたい」

意外な言葉に直ぐに返事が出来なかった。
確かに自分はつい数時間前まで赤ん坊の面倒をみていたわけだが、何も自分一人だけではない。それなのに何故よりによって自分が。


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