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第三章
名は体を表す10
しおりを挟む「お前、いい奴なんだな」
「なんだと思ってたんだ」
「で、さっきの話って? 続きどうぞ」
さっさと話を戻した青年に、イェンは気を取り直して体を起こす。
「あーアンタがなんでさっきあんなに怒ったのか知らないけど、とりあえずハクイ様はあの灰の魔族の子」
「マールだ」
「あぁうん。そのマールくんの親ではないよ」
すると青年は疑わしそうな顔をする。
「確率はかなり低いよ。まず第一にただの噂話。第二に灰の魔族が生まれる確率が低いから」
「低い?」
「普通に考えたら、四種族全ての魔族相手に子を成せるんだから灰の魔族は数多く存在してもいいはずだろ?」
「確かに」
「でも実際は灰の魔族は珍しい存在で、その理由の一つが赤白黒相手だと中々灰の魔族は出来ないってのがあるんだ。灰の魔族同士なら確実に灰の魔族しか生まれないけどね。だからあのマールって子もハクイ様より、灰の魔族同士の間に出来た可能性の方が現実的だよ」
青年は「そうか」と頷く。
「わかってくれた?」
イェンは青年が座る少し手前の椅子に腰かけ、肘掛けに頬杖をついた。
シャランと音をたて、イェンの耳飾りが揺れる。
それに興味を示した赤ん坊が、短い腕を伸ばし、手で掴むような仕草をした。
「ん? なんだ? どうしたの?」
その小さな手に触れ軽く握ると、イェンは気付いてないが赤ん坊は少し不満そうな顔をし、手を離そうとぶんっと振る、しかしイェンの大きな手は離れる事なく引っ付いて来た。
赤ん坊はまたぶんっと振る。でもやっぱりイェンの手は離れない。ムキになってそれを繰り返す。
ぶんっぶんっと何度も振り回す赤ん坊にイェンは首をかしげる。
「うーん。なんだろう? 何したいのかさっぱりわかんねーなー」
「お前さ、それ、外して隠した方がいいぞ」
考え事をして、見ていないようでしっかり二人の様子を見ていた青年が、ふと顔を上げ、イェンの耳飾りに軽く触れる。
「これだよこれ」
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