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第三章
名は体を表す07
しおりを挟む「昨日この子の世話を手伝ってくれた少年がそうだった」
「へーそう。あ、もしかして最近ハクイ様が連れて来た子かな?」
「ハクイ様が?」
「そうそうひょいっと連れて来たんだよね。森で拾ったとか言って灰の魔族なんて珍しいし結構気にかけているみたいだから、実はハクイ様の子じゃないかって噂がたってさ。もう落ち着いたけど」
「へー……その場合、母親って赤の魔族でいいのか?」
「そこなんだよねー」
イェンはよくぞ聞いてくれたとばかりに目を光らせる。
「普通、親が赤と黒の魔族なら、子供は女なら赤、男なら黒の魔族になる。赤と白でも、女なら赤、男なら白だ。黒と白が赤の魔族を相手にして、灰の魔族は産まれない」
「それって……」
「もしも本当にハクイ様が親であるなら相手は灰の魔族しか有り得ないって事だよ」
「……は?」
青年の思考回路は一瞬止まった。
「ど、いう事だ? 唯一の女は赤の魔族しかいないんじゃ? ……灰の魔族にも女がいるのか? それとも」
「灰の魔族に男も女もない。けど男も女の役もこなせる、それが灰の魔族」
その言葉に青年は僅かに顔を引き攣らせ
「まぁ男と女しかいない人間には理解出来ないだろうけど」
なんて事はないとばかりにイェンは鼻唄をする。
(そんな馬鹿な! マールの事は小さい頃から知っているんだ。何しろまだ赤ん坊のアイツを拾って名まで付けたのはこの俺だ。アイツは確かに男児で……)
一瞬襲った目眩を振りはらい、相手は人間ではなく魔族だと言い聞かせる。
けれど今までと違い、他人事と思える話ではない。マールは青年にとって身内も同然なのだから。
「灰の魔族は皆男みたいな容姿なのか?」
「いんや違うよ。その子によって女みたいだったり男みたいだったり、でも灰の魔族の場合、それは全く関係ないからな。灰の魔族は灰の魔族。そういう存在。だから相手は赤白黒灰、どの魔族でも問題ない」
「……知らなかった」
「まぁ知らないのは当たり前だって、アンタ《人間》なんだし」
「……」
黙りこんだ青年に、イェンは首を傾げ
「どうかし」
「ところで」
イェンの言葉を青年はわざと遮った。
「さっきの結界の話しなんだけど、俺は昨日 《魔王さま程の魔力がないと結界は扱えない》 って聞いたんだよね」
言葉を続ける青年の顔は微笑んでいるのに、背中には炎を纏っているようで、イェンは僅かに後ずさる。
「え、なっ何怒ってんだよ!?」
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