48 / 168
第三章
名は体を表す06
しおりを挟む「女?」
「見当たらないなーと思って」
「そりゃあ……って、あーそうか。知らなくて当然だよな。女はいるよ。赤い髪で翠の瞳だったら女。魔族の女って人間の女と違ってかなり気が強くてプライドが高いんだけど、それも城に住んでる女となるとそれは扱いづらくてさ、本人達がこっちで生活するのをよしとしないんだ。だからほら、多分そこの窓から見えるだろ?」
言われて窓の外を覗けば、ここから離れた庭の一角に立派な塔がたっていた。
「差し詰め女の城だ。赤の魔族は皆あそこで暮らしているよ。こっちに来る事は滅多にないな」
「それは、なんか大変そうだな。仲が悪いのか?」
「仲が悪いって言うか。……もうずっとこの状態だから当たり前になっているとか言うか、なんにしろちょっと城の女は苦手だな。別にいてもいなくても問題ないし」
イェンはどうでもよさそうに腕を頭の後ろに組んで歩く。
(……よく分かんないが、女の手を借りるのはあまり期待しない方が良さそうか)
「ところで《赤の魔族》ってなんなんだ?」
「…………そっかそこからか」
イェンは組んでいた腕を解いて腰に手を置くと、ゴホンと一つ咳払いをした。
「一重に魔族と言っても、黒の魔族、白の魔族、赤の魔族、灰の魔族と四種族にわかれています。一番多いのが僕や魔王さまみたいな《黒の魔族》。次に多いのがハクイ様のように治癒術に長けた《白の魔族》。その次に多いのが魔族の中で唯一の女である《赤の魔族》。最後に一番少ない《灰の魔族》。灰の魔族は色々と特殊で結構珍しい存在なんだ。まぁそれは後で説明するとして」
「女の事を赤の魔族って言うんだな」
「そうそう。で、誰がなんの魔族かは一目で分かる」
「色?」
「正解。黒の魔族は必ず黒髪だし服装も黒いのが多い、そして瞳が赤いんだ。ほら、僕と魔王さまがそうだろ? 白の魔族は白い髪で肌の色も白かったり服装も白を好むよ、んで瞳は紫色だね。ちょっと軟弱なのも特徴かな」
(ハクイ様軟弱なのか……)
「ハクイ様はそうでもないけど、都合が悪くなると軟弱なふりするから気を付けた方がいいぜ」
(ふりするんかい)
「んで赤の魔族は、さっき言ったように赤い髪に緑の瞳が特徴だ。服装は、侍女はともかく派手なのが多いな」
「そりゃまぁ女だしな。……で、灰の魔族ってのも髪が灰色なのか? もしかして海みたいな青い瞳?」
青年の頭には三白眼で目付きの悪い、それでも中身は純粋で優しい少年の姿が浮かぶ。
「そうだけど。よく知ってるな」
2
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?
ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。
ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。
そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる