48 / 159
第三章
名は体を表す06
しおりを挟む「女?」
「見当たらないなーと思って」
「そりゃあ……って、あーそうか。知らなくて当然だよな。女はいるよ。赤い髪で翠の瞳だったら女。魔族の女って人間の女と違ってかなり気が強くてプライドが高いんだけど、それも城に住んでる女となるとそれは扱いづらくてさ、本人達がこっちで生活するのをよしとしないんだ。だからほら、多分そこの窓から見えるだろ?」
言われて窓の外を覗けば、ここから離れた庭の一角に立派な塔がたっていた。
「差し詰め女の城だ。赤の魔族は皆あそこで暮らしているよ。こっちに来る事は滅多にないな」
「それは、なんか大変そうだな。仲が悪いのか?」
「仲が悪いって言うか。……もうずっとこの状態だから当たり前になっているとか言うか、なんにしろちょっと城の女は苦手だな。別にいてもいなくても問題ないし」
イェンはどうでもよさそうに腕を頭の後ろに組んで歩く。
(……よく分かんないが、女の手を借りるのはあまり期待しない方が良さそうか)
「ところで《赤の魔族》ってなんなんだ?」
「…………そっかそこからか」
イェンは組んでいた腕を解いて腰に手を置くと、ゴホンと一つ咳払いをした。
「一重に魔族と言っても、黒の魔族、白の魔族、赤の魔族、灰の魔族と四種族にわかれています。一番多いのが僕や魔王さまみたいな《黒の魔族》。次に多いのがハクイ様のように治癒術に長けた《白の魔族》。その次に多いのが魔族の中で唯一の女である《赤の魔族》。最後に一番少ない《灰の魔族》。灰の魔族は色々と特殊で結構珍しい存在なんだ。まぁそれは後で説明するとして」
「女の事を赤の魔族って言うんだな」
「そうそう。で、誰がなんの魔族かは一目で分かる」
「色?」
「正解。黒の魔族は必ず黒髪だし服装も黒いのが多い、そして瞳が赤いんだ。ほら、僕と魔王さまがそうだろ? 白の魔族は白い髪で肌の色も白かったり服装も白を好むよ、んで瞳は紫色だね。ちょっと軟弱なのも特徴かな」
(ハクイ様軟弱なのか……)
「ハクイ様はそうでもないけど、都合が悪くなると軟弱なふりするから気を付けた方がいいぜ」
(ふりするんかい)
「んで赤の魔族は、さっき言ったように赤い髪に緑の瞳が特徴だ。服装は、侍女はともかく派手なのが多いな」
「そりゃまぁ女だしな。……で、灰の魔族ってのも髪が灰色なのか? もしかして海みたいな青い瞳?」
青年の頭には三白眼で目付きの悪い、それでも中身は純粋で優しい少年の姿が浮かぶ。
「そうだけど。よく知ってるな」
2
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる