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第三章
名は体を表す06
しおりを挟む「女?」
「見当たらないなーと思って」
「そりゃあ……って、あーそうか。知らなくて当然だよな。女はいるよ。赤い髪で翠の瞳だったら女。魔族の女って人間の女と違ってかなり気が強くてプライドが高いんだけど、それも城に住んでる女となるとそれは扱いづらくてさ、本人達がこっちで生活するのをよしとしないんだ。だからほら、多分そこの窓から見えるだろ?」
言われて窓の外を覗けば、ここから離れた庭の一角に立派な塔がたっていた。
「差し詰め女の城だ。赤の魔族は皆あそこで暮らしているよ。こっちに来る事は滅多にないな」
「それは、なんか大変そうだな。仲が悪いのか?」
「仲が悪いって言うか。……もうずっとこの状態だから当たり前になっているとか言うか、なんにしろちょっと城の女は苦手だな。別にいてもいなくても問題ないし」
イェンはどうでもよさそうに腕を頭の後ろに組んで歩く。
(……よく分かんないが、女の手を借りるのはあまり期待しない方が良さそうか)
「ところで《赤の魔族》ってなんなんだ?」
「…………そっかそこからか」
イェンは組んでいた腕を解いて腰に手を置くと、ゴホンと一つ咳払いをした。
「一重に魔族と言っても、黒の魔族、白の魔族、赤の魔族、灰の魔族と四種族にわかれています。一番多いのが僕や魔王さまみたいな《黒の魔族》。次に多いのがハクイ様のように治癒術に長けた《白の魔族》。その次に多いのが魔族の中で唯一の女である《赤の魔族》。最後に一番少ない《灰の魔族》。灰の魔族は色々と特殊で結構珍しい存在なんだ。まぁそれは後で説明するとして」
「女の事を赤の魔族って言うんだな」
「そうそう。で、誰がなんの魔族かは一目で分かる」
「色?」
「正解。黒の魔族は必ず黒髪だし服装も黒いのが多い、そして瞳が赤いんだ。ほら、僕と魔王さまがそうだろ? 白の魔族は白い髪で肌の色も白かったり服装も白を好むよ、んで瞳は紫色だね。ちょっと軟弱なのも特徴かな」
(ハクイ様軟弱なのか……)
「ハクイ様はそうでもないけど、都合が悪くなると軟弱なふりするから気を付けた方がいいぜ」
(ふりするんかい)
「んで赤の魔族は、さっき言ったように赤い髪に緑の瞳が特徴だ。服装は、侍女はともかく派手なのが多いな」
「そりゃまぁ女だしな。……で、灰の魔族ってのも髪が灰色なのか? もしかして海みたいな青い瞳?」
青年の頭には三白眼で目付きの悪い、それでも中身は純粋で優しい少年の姿が浮かぶ。
「そうだけど。よく知ってるな」
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