魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。

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第二章

躓く石も縁の端27

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(や、やっぱキツイ!!)

自分の腰に回されている腕を鷲掴んで、必死にたえー

「たぁえられるかああああ!」
「!?!?」

結局思いっきり殴ってしまった。

「……あ、悪い」
「っその手癖の悪さどうにかしないか。地味に痛いぞ」

魔王は頬をおさえて涙目に言う。

「いや、でもさっき殴られてもいいって」
「それとこれとは別だ。そもそも周りをどうこう言う前にお前が一番私を魔王だと思っていないんじゃないか」
「あっ一応無礼だと思ってんだ? 全然怒らないから平気だと思ってたわ」
「いや、無礼なのはあまり気にしてないが」
「気にしてないんかい、そりゃ凄い」
「少なくとも今、怒ってるぞ。自分で助けを求めておいて、なんだこの仕打ちは」
「いやだからゴメンって、……ええと、申し訳ございませんでした魔王さま」
「もう知らん」

てっきり笑って許すかと思いきや、魔王はフンっと顔を背けて寝台の中に入り込む。そしてしっかり天蓋を閉めてしまった。

(あー、こりゃマズイ)

青年は頬をかいて、何を思ったのかその場から離れた。


――暫くして。

魔王の頬に冷たい物があてられる。
その冷たさに思わずピクリと動くと、赤ん坊を護るように横向きで寝ていた魔王の背に、声がかかった。

「氷水に浸したタオル。俺のせいで魔王さまの頬が腫れたら流石に忍びないからさ。せっかく顔はいいんだし」
「一言余計だぞ」
「へへ、ごめん。あと、有り難う」
「……」
「悪かったよ。助けて貰ったのに、最初は意味分かんなくて殴っちまったし、その後もつい手が出て、失礼な事ばっかして、お礼してなかったと思ってさ。本当、有り難う」

頬にタオルをあてがう手に、魔王は手をそえて、ようやく青年の方に体を向けた。

「あと、言う事ちゃんときかなくて悪かったよ」

青年は眉尻を下げ苦笑した。

「……いや、私の方こそ悪かった。そもそも人間を連れて来いなどと言わなければ、お前は死にそうになる事もなかった。……もう、大丈夫そうか?」
「あぁうん。まぁ体が随分軽くなったし、気分も頗るいいな。今寝ても死ぬどころか、朝気持ちよく起きれそうだ。大丈夫」
「……お前の言う事は信用ならんからな」
「でも有り難うって言葉は信用してくれるんだろ?」

「そうだな。それは嘘じゃなさそうだ」


魔王がふっと頬笑む。



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