魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。

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第二章

躓く石も縁の端26

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「ん? あーやはりか。だが心配するな明日あすにはよくなる」
「本当ですか?」
「本当だ」
「このまま寝たら明日には死んでる気がするんですけどね」
「まぁ落ち着け」

魔王は胸ぐらを掴む青年の手をとこうとして手をかける。
すると案外簡単に離れてしまった。
青年は真っ赤な絨毯に両手をつき、頬には汗が伝い、苦しそうに呼吸を繰り返す。

(やはりさっきのでは足りなかったのか……)

確かに魔王は青年の全身を回っていた邪気を吸い出したが、途中で思いっきり殴られてしまった為、全部とまではいかなかった。
多少不安があったとは言え、本人も元気なので、あとは結界の中での自然回復で、問題ないと思っていたのだが。


(やべぇーヤベーって、本当に大丈夫なのかよ?)

青年は朦朧としだした意識を正そうと歯を食いしばる。
決して眠いからではない。何故ならさっき自分がぶっ倒れた時の感覚とよく似ていたから。痛くも苦しくもないが、朦朧として、動けなくなっていく感覚。
なんとなくあぁ自分は死ぬのかと感じ、焦るのだ。
そもそもお茶菓子を食べ終えた辺りからおかしいなと思っていた。
それでもその事を認めたくない思いと、周りに気付かれる訳にはいかないという思いから気をはっていた。
そうそう何度も赤ん坊やマールや魔族の前で、情けない姿を晒すわけにはいかない。
いや、マールや魔族の前でなくたって。


(でももう無理だ)


正直物凄く不本意だ。
あれは結構苦しかったし、何よりなんか情けないし、なんか嫌だ。

(不本意だ、物凄く不本意だ。けど、今このまま寝たら本当にマズイ気がする。俺、まだ死ぬ訳にいかないし、人生こんな事もあるさ。うん、犬に噛まれたとでも思って、いやせめて好みの女に)

死ぬのはごめんだ。まだ死ぬワケにはいかない。こうなったらなんとしてでもと決意を固め、顔を上げようとした。

「すまん。さっきのは無しだ」

伸びてきた手に顎を掴まれ、上向きにされると、紅い瞳と目が合い、端整な男の顔が近付いて思わず目を瞑る。 
見た目だけなら人間だよなぁと、どうでもいい事を思いながら。
そのまま唇が重なり、唇と舌に覚えのある痺れが襲い、そしてやはり体の底から何かがせりあがる。マールはそれを邪気だと言っていた。
そして魔王がその邪気を呑み込む。
そのたびに青年の全身に電流のようなものが走り、体が弓なりに沿って魔王はその腰を支えてはくれるのだが……

「っっっ!」

声を押し殺そうとしても、出来そうにないくらいの苦しさが青年を襲った。



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