魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。

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第二章

躓く石も縁の端24

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先程の肉やらかんやらの事を思い出し、青年が湯から体を上げた頃。
魔王はふかふかの寝台の上に寝かせた赤ん坊と、じぃっとにらめっこしていた。

「……頼む。そろそろ離してくれると有り難いのだが」
「だぁーあ」

赤ん坊の手には魔王の人差し指がしっかりと握られていた。
青年が湯浴みに行ってからずっとこうで、全く離してくれない。
どうすればいいのかわからない魔王は、とりあえず辛抱強く離してくれるのを待っているが、かれこれ一時間近くたっている。
寝台のそばで膝立ち状態の魔王にはそろそろ限界だった。

「頼む。降参だ。私の負けだ。離してくれ、そろそろ足が悲鳴をあげててだな。何しろこう見えて結構歳でー」
「あーう!」
「何故だ? 何故離してくれない?」
「だぁ! だ!」

何故か喜ぶ赤ん坊に魔王はもうたじたじだ。

「いやまぁ、楽しいならいいんだ。楽しいなら」

諦めて寝台に顔をうずめ、ただ自分の指を離さない赤ん坊を眺める。
考えてみたら拾ってからずっと、泣いているか寝ている姿ばかりみていた。
それが今は自分の指を握り締め、嬉しそうにしている。

「……お前はこんなに可愛いかったのだな」

(一時はあまりの泣き喚きっぷりに、悪魔か何かかとも思ったが……こうしてみると随分愛嬌のある)

不思議だと、魔王は思う。
ただ指を握られているだけなのに、その小さな手と指でしっかりと握り締められると、何故か不思議と愛しさが込み上げてくる。
ふっと、魔王の顔がほころんだ。

「私は赤ん坊の事はよくわからんが、お前が可愛くて優しい子なのは分かるぞ。あと少しお転婆なのもな。この魔王の私が言うんだ間違いない」

赤ん坊はわかっているのかいないのか、じぃっと黙って魔王を見た。

「私は魔族でお前は人間だからな、私が生きている限り、お前を一生守ってやれる。だから安心して大きくなるといい」

赤ん坊は不思議そうにパチパチと瞳を瞬く。

「……あの少年は、あれはどうにも何を考えているのか、手がかかりそうだ。が」

魔王は赤ん坊の頭をそっと撫でる。

「案ずるな。お前たちは二人とも、私が責任をもって守ってやる。安心しろ」


すると赤ん坊はしだいにうとうととしだし、寝息をたて始めた。
その寝息につられ、魔王の瞼も自然と落ちる。


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