31 / 168
第二章
躓く石も縁の端18
しおりを挟む「え? 凄く一般的なお茶菓子ですよ? こっちでは食べないんですか?」
「そうだな。おやつに食べると言ったら果物だ。そもそも焼いた物を食べるという習慣があまりないな」
それを聞いて青年は正直ドン引きした。
(えぇ、ま、まさか赤ん坊に近付けた肉って、生だったんじゃあ、いやまさか……てか焼いててもダメだけど)
「お茶はフレ・アシディティーですよ」
「え? なんですそれ?」
今度は青年の知らないものだった。
ハクイが優雅にお茶の入ったティーカップを持つ。
「酸味の中にほのかな甘さと爽やかな香りが楽しめる。魔族ではごく一般的なお茶です。一つの木から生るアシッドとメノウと言う二つの果物とその葉から作られています」
「へー! 一つの木から別々の果物が生るなんてはじめて聞いた! 面白い!」
「その名の通り、アシッドは酸っぱい実で、メノウは甘いのですよ」
青年はわくわくとティーカップを片手に持つ、しかし念の為、飲む前に眼だけでマールに伺う、するとマールは自らお茶を飲んで見せ、軽く微笑んだ。
(人間の俺でも飲めるって事か)
初めて飲む魔族のお茶。
少し緊張しつつ、青年はそれを口許まで運ぶ。
「う、うっまい! このお茶!」
「旨いじゃないか! このお茶菓子!」
「「え?」」
たまたま同時に飲み食べた魔王と青年の声が重なり、思わず二人は顔を見合わせる。
「どうやら二人とも気に入ったようですよマール」
「良かったです。ハクイ様はどうですか?」
「お前が選んだお茶と菓子です。気に入らないわけがないでしょう」
当たり前のようにそう言って、菓子を口に運ぶハクイに、マールは嬉しそうに微笑んだ。
「ん? なんだお前も食べたいの? 残念だな~お前はまだ食べれないんだよ」
青年が片手に抱いている赤ん坊が、青年の左手に持つクッキーを眺め、手を伸ばしている。
「いいじゃないか。少し食べさせてやったらどうだ」
それを見て、何も知らない魔王はとんでもない事を言う、青年は眉間に皺を寄せ魔王を睨んだ。
「あのね魔王さま。さっきも思ったけど赤ん坊は俺達と同じ物は食べれないの! 離乳食だってまだ始めてないのにバカ言わないで下さいよ」
「離乳食?」
「それにね。この子に肉を食べさせようとしたらしいけど、まだ無理だから、さっきので分かったとは思うけど、固形物はダメだから。それを赤ん坊に喰わせようなんて、知らないとは言え虐待ですよ虐待。未遂で終わってホント良かった」
「ぎゃ、虐待だと?」
魔王の顔が青ざめる。
「やはりそうでしたか、止めて正解でした」
2
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

ペットの餌代がかかるので、盗賊団を辞めて転職しました。
夜明相希
BL
子供の頃から居る盗賊団の護衛として、ワイバーンを使い働くシグルトだが、理不尽な扱いに嫌気がさしていた。
キャラクター
シグルト…20代前半 竜使い 黒髪ダークブルーの目 174cm
ヨルン…シグルトのワイバーン シグルトと意志疎通可 紫がかった銀色の体と紅い目
ユーノ…20代後半 白魔法使い 金髪グリーンの瞳 178cm
頭…中年 盗賊団のトップ 188cm
ゴラン…20代後半 竜使い 172cm

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

息の仕方を教えてよ。
15
BL
コポコポ、コポコポ。
海の中から空を見上げる。
ああ、やっと終わるんだと思っていた。
人間は酸素がないと生きていけないのに、どうしてか僕はこの海の中にいる方が苦しくない。
そうか、もしかしたら僕は人魚だったのかもしれない。
いや、人魚なんて大それたものではなくただの魚?
そんなことを沈みながら考えていた。
そしてそのまま目を閉じる。
次に目が覚めた時、そこはふわふわのベッドの上だった。
話自体は書き終えています。
12日まで一日一話短いですが更新されます。
ぎゅっと詰め込んでしまったので駆け足です。
【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。
ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。
皇帝に追放された騎士団長の試される忠義
大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。
帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか?
国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる