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第二章
躓く石も縁の端10
しおりを挟む魔王とハクイ、二人並んで見送り、悪魔の子たちがいなくなるのを見計らって警備兵たちが荒れた庭を片付け始める。
その様子を眺めながら、ハクイは今日何度目かしれない溜め息を溢した。
「全く忘れた頃にやってくるんですから、あの子達は」
「いやぁ本当懲りないよなぁ。以前来た時は厨房を荒らしたんだったか?」
「いいえ、荒らしたんではなく、厨房にある肉を盗んでいったんです。それも一番大きくて高い物を。しかも結局重くて運べなかったのか、森の入り口に捨ててありました。あの子達には食べ物の有り難みや、他人の物をとってはいけない事を説きましたが、きっとわかっていないでしょうね」
二人は話ながら庭園を後にし、城内に入って行く。
「はは、だろうな。あれらも構って欲しいなら悪戯などせず、素直に遊んで欲しいと言えばいいものを」
「……魔王さま。いい事いいますね」
「ん?」
急に立ち止まり何か言い出したハクイに、魔王は振り返る。
「悪戯以外の遊びを知らないからいけないんですよ」
「ん?うん」
「悪戯以外の遊びを覚えさせましょう。悪さしなくても構って貰える事を知ったらもうこんな事をしなくなるはずです」
あぁいいことを思い付いた。何故今まで気付かなかったのかと、多少興奮ぎみでブツブツ言いながらまたハクイは歩き出す。
「ところでハクイ、お前に頼みたい事があるのだが」
「なんです?」
「いや、忙しいなら他の者に頼むから別にいいのだが」
「だからなんです? 忙しいんですからさっさと言って下さい」
「実は《あれ》の服を用意して欲しいんだ……ほら、赤ん坊の服などここでは手に入らないだろう? だから作って貰えないかと」
「あぁなんだそんな事ですか。それならもう出来ます」
「ん? なんだ作ってあるのか?」
「当たり前でしょう。いつまで素っ裸にさせとくのですか、可哀想でしょうが」
「そ、そうだよな。うん。そうだ」
ハクイにも同じ事を言われ多少自分が情けなくなった魔王が、何かに気付きピタリと立ち止まる。
「ハクイ」
「はい?」
「結界に何か触れた」
「なっまさ……っ!」
二人は顔色を変え、顔を見合わす。
「聞こえたか?」
「えぇ」
同時に駆け出すと、ハクイは左手を、魔王は右手を横に翳し、二人の姿がふっと消えた。
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