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第二章

躓く石も縁の端09

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「ハクイ」

ふいに声をかけられ、ハクイは後ろを振り返った。

「魔王さま何故ここに」
「てこずっていると聞いてな、子供相手じゃ手荒なことは出来んだろ」
「問題ありません。今に帰らせますよ」

すると「魔王さまよ」「魔王さまだ」と相変わらずクスクス笑う。
そんな悪魔たちにハクイは向きなおった。

「あなた達、偵察とは相手に知られずこっそりやるものなのですよ。それなのに庭なんて荒らしていたら、元も子もありません」

「だって、人間の気配なんて全然しないし、何処か分かんないんだもん」
「そうそう、せっかく来たのにさ~」
「面白くないからお庭をぐちゃぐちゃにしたのー」

唇を尖らせ口々にそう言う。
場所がわからないのは当然だった。人間は魔王のはった結界の中にいる。
しかも魔王のことだ、ここに来る前に更に結界を強めたに決まっている。
何しろハクイでさえ、人間の気配を感じとれていなかった。部屋の場所を知らなければ今頃、人間がこの城の何処にいるかなど検討もつかない。

「なるほど、自分の思い通りに事が運ばないからこんな事を、勝手ですね。いいですか、この庭は毎日庭師が手をかけているのです。その努力と成果を貴方たちは踏みにじり、わたくし達に迷惑をかけている。そこのところをよく覚えておきなさい」

悪魔たちはキョトンとした顔をする。

「ねぇ意味わかる~?」
「関係ねーよ」

思った通りの反応にハクイは顔色一つ変えず続けた。

「ところであなた達、エル様に報告すると言っていましたが本当ですか?」

すると悪魔たちはパッと顔を明るくし、得意そうに話し出す。

「そうさ、エル様に報告して驚かすんだ」
「エル様きっと誉めて下さるわ」

「そうですか、驚かすんですか。つまり〝エルディアブロ〟はこの事を知らないと」

悪魔たちはギクリとした。

「こんな勝手な事をしてエルディアブロはどう思うでしょうね? 少なくともわたくしはこの事を彼に訴え、悪魔との同盟を破棄し、最悪争うつもりですよ。そうなればエルディアブロの怒りは当然、貴方たちに向くでしょう」

すると情けない顔で「そんなの嫌だよ」「酷い」と言い出す。

「それが嫌なのでしたらさっさと帰りなさい」

「うわ~ん、魔族なんて嫌いだー!」
「何さ何さ白いくせにー!!」
「覚えてろよー!」

口々にそう言って、一目散に森の中に消えていくその背中に、魔王は「もう悪さするんじゃないぞー」と、一応言っといた。


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