21 / 159
第二章
躓く石も縁の端08
しおりを挟む「――全く、ほとほと困りましたね」
マールに使いを頼んでから直ぐに、ハクイは直属の家来からの報告を受け、問題の庭園に来ていた。
庭園は報告の通り、ある種族にいいように荒らされている。
草木は倒れ、枯れ、踏み潰され、庭師が毎日愛情を込めて美しく丁寧に手掛けた、芸術品とも言える庭は、もはや見る影もない。
その犯人達を目にとめ、ハクイは深い溜め息とともに、片手で頭を押さえた。
その犯人とは
「ハハハ皆みろよ。魔族のハクイ様が御出座しだ」
「クスクス本当ね本当ね。相変わらず真っ白だわ。きっと頭の中も白いのよ」
「みろよ。変な顔で頭を抱えているぞ」
見かけは魔族や人間と大差なく見えるが、その耳や目尻は鋭く尖り、背中には大きな蝙蝠のような真っ黒な翼が不気味にはためく。
「あぁ? なんだアイツあそこから動きゃしねーぞ?」
「きっと悪魔の私たちに怖じ気づいたのね」
「魔王の右腕もたいしたことねーな」
犯人はそう、悪魔だった。それも子供の悪魔が12人ほど。
悪魔たちはクスクスクスクスと笑っている。
ハクイはもう一度深い溜め息をつくと、腕を組んで顔をあげた。
「あなた達、ここが何処か知っての狼藉ですか?」
すると悪魔の子供たちは互いに顔を見合わすとドッと笑った。
「ウフフ聞いた聞いた? 何処か知って? ですって」
「聞いた聞いた狼藉ですってよ」
「ここは何処か? 何処か知らない訳がない」
「ここは魔族の城の庭園さ」
「知ってるから来たんじゃねーか」
「知ってて来たから草木も綺麗なお花もぐちゃぐちゃなのよフフフフフ」
あるものは飛び回りながら、あるものは木の上から、クスクス笑う声がこだまする。
その悪魔たちを警備兵たちが追い払おうとするが、完全に遊ばれていた。
ハクイは頭が痛くなった。
「お前達もういい、ここはわたくしに任せて庭を片付ける準備でもしてなさい」
「は、はい!」
言われて警備兵たちは慌てて思い思いに散る。
「まっったく情けない。はぁもう。……貴方達、いったいなんの用です。ただ悪戯をしに来ただけならただでは帰しませんよ」
悪魔たちは庭を荒らすのをやめ、みなハクイの方を見る。
「やあね、ハクイ様ったら怒らないでよ。私たち魔王が人間を飼い始めたって聞いたから本当か確かめに来ただけなんだから」
「人間に挨拶しようと思って」
「そうそう。偵察して〝エル様〟に報告するんだ」
「……偵察ね」
ハクイは呆れた顔をした。
2
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる