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第二章

躓く石も縁の端06

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「でも、オレに触れるとえんの皆が具合悪くなるようになったから……」
「それでも書き置きぐらい残せただろ?」
「そうなんだけど……怖くて、なんか早く出て行かないとって思ったら」
「そうか、まぁお前が無事なら良かった。俺の事も忘れず覚えてるみたいだし、何か酷い事されたりしてないよな?」
「それは全然、みんないい人だし」

言われて青年は魔王やその他の魔族達を思い出した。
まだ数人しか知らないが、確かにそうだろうと思う。

「それよりなんで人間のアナタがここに?まさか子守りって」
「あぁそれ俺の事だな」
「えぇえどうしてそんな事に」

青年はパッと離れると結界の中に上体を戻し、ムスッとした顔で腕を組む。

「俺がよほど暇そうに、そこら辺を散歩してるように見えて連れて来たんだとさ、ほぼほぼ誘拐だぞ?しかもよく考えたら結界の外に出れないって事はもはや軟禁状態じゃないか、籠の中の鳥だよ。全く、こっちは絶賛仕事中だったってのに」
「え、じゃ、じゃあ誰かに一言もなく!?」

マールは今度こそ青ざめた。

「そうなるな」
「は、早く戻らないと大変な事に!今頃アル様が必死で探してるよ!」
「《アルデラミン》の事なら気にしなくても大丈夫だ。どうせいつもの事だから上手くやってくれているよ」
「そうじゃなくて」
「それに俺は暫くここから離れられない。ここにはどうにも俺が知るべき事がまだ沢山あるみたいだからな。ネーベル森林の事も、あの泉の事も、ここに来なければ何も分からず仕舞いだった。俺は魔族を、産まれたばかりの子を捨てる残忍な種族だと誤解していたよ」

そこまで言うとちょっと待ってろ。
と言って中に引っ込むと、青年はガサゴソと紙とペンを探しだし、何やら書き込むとその紙をマールに渡した。

「それを園の者に、アルデラミンに直接渡してくれても構わないけど、さすがにお前じゃ無理だろうからさ、園のソフラさんに渡してくれ、頼むよ」
「え、えぇー。オレもうあそこには戻らないつもりで」
「まだ触れなければ、大丈夫って程度の邪気なんだろ?」
「そうだけど……」
「じゃあ頼んだ」

青年はマールの肩に手を置いた。

「あれ?」

その手がズルリと滑り落ち、青年の視界がぐるっと回る。

「え、えぇ? えぇええ!?」

床に崩れ落ちそうになった青年を、マールが慌てて支えた。

「なに!? なになに!? 今度はなんの冗談!?? ちょっと! おう」

「それ……ここで、いったら、明日が無い、と思え」

「おおおおお兄ちゃん!!」



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