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第二章
躓く石も縁の端04
しおりを挟む部屋を隔てる扉はない。
隣の部屋を覗き込むと、どうにも寝台らしきものがみえた。
青年は好奇心から隣の部屋へ入ろうとして、ハタと立ち止まる。
「こっちの部屋もちゃんと結界はってあるよ……な?」
赤ん坊を抱いたまま。部屋の前で足を肩幅ほど広げ、中腰で中を伺う。
そのうち赤ん坊を抱いた腕を隣の部屋から離すように伸ばして、取り敢えず自分の片足と顔だけを恐る恐る入れてみた。
「………………うん」
思いきって体ごと中に入る。
「……うん。okok大丈夫だいじょーぶ。ぜんっぜんなんともない!」
考えてみたらあの心配性の魔王の事だ。結界がはられていない訳がなかった。
青年はハハっと乾いた笑いをもらすと、部屋の四隅にある真っ白な寝台にボフンっと赤ん坊を抱いたまま寝転がる。
「おお~いい感じにフカフカ~。手触りも最高~こっちの城のベッドも悪くない!」
見上げれば、高級そうな薄い布の天蓋が下がっている。
青年は自分の横に赤ん坊を寝かせた。
さっきとはまた違った景色に、赤ん坊はキョロキョロと視線をさ迷わせる。
「お前もう寝返りできる? ってそんな布でぐるぐる巻きにされてたら動けないよな、ごめんごめん」
寝台の上でゴロゴロする青年と赤ん坊に窓から光が差し込み、ぽかぽかとした陽気にあてられて、二人の瞼はとろんと微睡んだ。
「あの、すみませーん。誰かいますかー?」
微睡ん「すみませーん」
まど「あれ、おかしいなぁ人の声がしたと思ったんだけど」
微睡んだがあっと言う間もなく、その時はさった。
赤ん坊だけが、スヤスヤと寝息をたて始め、青年はやれやれと寝台から起き上がる。
「はいはーい、なんでしょーかー」
やる気のない声で、さっきの部屋へ向かい、扉のない出入口の壁に右腕をついた。
「ご用は手短にー……」
自分と頭二つぶんは違う少年と目と目があう。
「なっおおお前!!」
「!??」
二人は目を見開いた。
「その三白眼の青い瞳に灰色の髪! お前『マール 』だな!!」
そう言う青年に、マールと呼ばれた魔族の少年は、化け物でも見たような顔で青ざめ、震える手で指を差す。
「な、なんでこんな所に、おおおおおおうガッハアー!」
ドカッと鈍い音をたて、青年のボディーブローがマールに炸裂した。
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