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第二章
躓く石も縁の端03
しおりを挟む「あぁしかし良かった。そう言ってくれて助かるぞ人間の少年」
「え、いやだから少年じゃ……あぁそっか根本的に色んな基準が違うんだった」
「どうした?」
青年は不思議そうな顔をする魔王をみて苦笑する。
魔王は見た目だけで言うならまだ三十代くらいの歳に見えるのに、本当は多分、千歳以上の歳なのだ。
ちなみに青年は今年で二十六になる。
これは少年と言われても仕方がない。
(でもよく少年に赤ん坊の面倒みて貰おうと思ったな。女ならまだしも、たまに魔族の感覚がわからないわ。ま、それだけ藁にもすがる思いだったって事かな)
そんな事を思っていると部屋の出入り口から魔王を呼ぶ声がした。
「魔王さま。お取り込み中すみません。ちょっとお話が」
控えめに呼ぶのはきっと魔王の家来だろう。
「どうした」
呼ばれて出入り口の方まで行くと家来は何やら耳打ちをする。
「そうか。仕方あるまい今すぐ行く。お前は先に行け」
すると家来は返事をして足早に去っていった。
魔王は廊下に出ると出入り口に手を翳す。
「少し出てくる。念の為、部屋の結界を強めておくが……少年、ここから出るなよ。何度も言うが死んでしまう、そしたら結界の意味もないからな」
「結界に俺が触れても大丈夫なんですか?」
「あぁ、これは中の者には害のない結界だ……って、だからって出るでないぞ」
「と言うか魔力使いすぎて結界はれないとかさっき言ってませんでした?」
「簡単なのなら造作もない。とにかく出るな」
「わかってますって、たく、信用ないなぁ」
「全く本当だろうな?」
魔王は疲れたようにそう言ったが
「まぁいい信用するぞ。何かあったら呼べ」
と、部屋から離れて行った。
「…………行っちゃったね」
「う、」
魔王城のとある一室に人間の青年と赤ん坊だけが残された。
見張りも護衛もつけないのはどういう了見なのか、それほどまでにこの結界の中が安全なのか。
はたまたそれ以外の理由でか。
広々とした室内に二人だけなのはどうにも物寂しさを感じる。
青年は赤ん坊を抱いたまま、部屋の中央にある大きなテーブルの椅子に軽く腰かけた。
そのテーブルの上にはさっきまで赤ん坊を寝かせていたクッションが置いてある。
「……いくらなんでも、お前のベット用意して貰わなくちゃなぁ。あと名前、な?」
と声をかけると、赤ん坊はじーと青年を見詰め指をしゃぶる。
「お前何ヵ月くらいなのかな~?離乳食とかいけるのかなー。首は座ってるみたいだけど。それにしても……」
ぐるっと部屋の中を見渡す。
「本当に広いな。あっちは寝室かな?」
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