魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。

文字の大きさ
上 下
15 / 168
第二章

躓く石も縁の端02

しおりを挟む

かれこれ四十分以上城の中を歩き回っている訳だが、不思議な事に誰とも会わないうえ、いつまでたってもハクイの部屋につきそうにない。

「お、おかしいな。確かこっちのハズじゃ」

角を曲がると、外の庭が一望出来る開けた場所に出た。

「えー、ここ知らない。まさかオレ、迷ってる…?」

目の前には柱の間に壁がなく外部に開放されている吹き抜けが。
少年は自分がいる位置を確かめようとその吹き抜けから身をのりだして周りをぐるっと見渡す。
少し離れたところからほぼずっと辺りは森だ。

「ん~三階ぐらいかな?あ、あそこに花壇がある。で、あっちが多分オレが入って来たほう…なんだろうか」

少年は吹き抜けから離れて困ったと頭をかく。

「あーハクイさまあ~ここ何処ですか~? 何処にいますか~?」

しーん。

先のみえない廊下の向こうに向かって少し声を上げてみたが、何一つ返事は返ってこない。

「……当たり前か」

少年は一度床に置いた沢山荷物が入った大きな布の袋を「よいしょ」と持ち直す。

「早急って言ってたし、きっと赤ちゃんも子守りの人も困ってる。とにかく急ごう」

歩き出すと振動で中の荷物が移動し、貰った駄賃で買ったお菓子が袋から顔をだす。

「ハクイ様にもあげるんだ。これ美味しいし、きっと喜んでくれる」

ふと、自分に買うといいって言ってくれたのにハクイ様にもあげたら怒るだろうか。と思ったが、そんな事はないと思い直す。

「ハクイ様、優しいから大丈夫。たまに抜けてるけど、大丈夫」

少年はここに来てまだ日が浅い。
つい最近まで森の中をただ一人でこの城に向かって歩いていた。
そんな時、たまたま野暮用で通りかかったハクイが少年を見つけ、拾ってくれたのだ。


『こんな所で何をしてるんです。困っているならわたくしの所に来るといい。さぁ』


そう言って差し出された手を、少年はしっかりと握り返した。
あの時の事は今でも覚えている。
今まで住んでいた所から一人、離れざるおえなくなって、不安をかかえながらも、あるはずの城を目指してただひたすら森の中を歩いていた。
一度も行った事がない、話でしか聞いた事のない、果たして行ってみたところで自分は受け入れて貰えるだろうか?

そんな不安を、ハクイが全部取っ払ってくれた。
だから少年はハクイを凄く慕っている。


「よっし! 行くぞ!」


少年は気合いを入れ直して長い長い廊下をまた歩き出す。



 一方その頃。

赤ちゃんと子守りと魔王はと言うと――。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

紹介なんてされたくありません!

mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。 けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。 断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

処理中です...