魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。

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第一章

藁にもすがる10

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「これで満足か?」

魔王が両手を腰にやり偉そうに青年をみる。
だが青年はそれどころではない。

「この子の服、用意出来ないですか?」 と言い、何も分かっていない魔王は「まだあるのか……」と肩を落とした。

「ずっと布にくるんだままじゃあ可哀想だし、風邪をひいてしまいますよ」
「うっ確かに」
「脱ぎ着しやすい簡単な物でいいです」
「そうだな。ハクイは裁縫が得意だから頼んでみても……あぁでもあれは色々と忙しいからなぁ」
「ハクイさんって裁縫得意なんですか?」
「ん? そうだな。なんでも器用にこなすからな」
「へーなんか女性的ですね。見た目も女の人みたいに綺麗だし」

青年は最初に見た時からずっと思っていた事を何気無く言ってみた。
実際ハクイは中性的な顔立ちで男の自分から見ても知的さと美しさを兼ね備えた女性のようだった。
だからと言って、女程華奢ではなく、だからと言って魔王ほどではないが、きちんと男らしい体躯で、それはそれで妙にしっくりくるのだ。
そう、黄金比だ。黄金比なのかも知れない。
まぁ要約すると、ただのイケメン、いや美形か。

「それ、間違っても本人の前で口にするんじないぞ」
「え?」
「あれは女のようだと言われるのを死ぬほど嫌っているからな。とんでもない事になる」

魔王は何か思い出したのか険しい顔をする。

「あ、うん。気を付けます」

(い、いったい何があったんだ)

気にはなったものの、魔王の表情に危機迫るものを感じた青年はあえて聞かなかった。

「とりあえず、服は用意させる」
「あと湯浴みをさせてあげたいんだ。何か使える」
「タライじゃ駄目か?」

魔王と青年はそのまま、何をするべきで、何が必要で何が使えて何がなくて何を揃えて、と言う話を続けた。
そうして数分もしないうちに、杖をつき、かなり年老いた一人の老人が魔王の配下に連れられやって来たのだ。

「龍仙、早かったな。待っていたぞ」

魔王は老人をそう呼んで親しげに歩み寄る。
しわくちゃの肌に、背中を曲げ、サイズの合わない大きめの黒い服装で、裾を引き摺って歩くその姿は一見不気味で、でも嫌な感じはしない。

「お前が今すぐ連れて来いと此奴こやつに命じたからだろうに」

龍仙と呼ばれた老人は少し不機嫌そうに言う。

「そう怒るな。急ぎの用だったのだ」
「どうせその赤ん坊を見ろと言うのだろう? お前さんの言う事なぞわかっておるわ」

彼はヨタヨタと危なっかしい足取りで、テーブルの上のクッションで寝ている赤ん坊に近寄る。
青年はその姿に思わずかけより手をかした。

「だ、大丈夫ですか?」
「ん?」


老人の大きな瞳がギョロリと青年を見る。



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