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第一章
藁にもすがる08
しおりを挟む「あのー二人の決意はよーく分かったんだけど、魔族の子でも親の邪気にあてられるんですよね?この子は大丈夫なんですか?」
そろそろ掴み合いを始めそうになった二人に、呆れて声をかけた。
すると魔王がこっちを振り向く。
「それなら案ずるな。この部屋に結界をはってあるからな。人間のお前にも赤ん坊にも邪気の影響はない」
「ただちょっとわたくし達には息苦しいですがね」
そう言って笑う二人、自分達は息苦しい筈なのに、ここにいる者達はそれを我慢してると言うのか、たった二人の人間の為に、そしてこの二人はそう言って笑ってみせるのか。
その姿に、青年の気持ちは一応決まった。
が、ちょっと言わずにはいられない事が
「……それでいいなら、魔族の子にも結界使ってあげたらいいのでは」
その場にいた全員が固まった。
「か、考えた事もなかった。泉に預けるのが当たり前すぎて……」
項垂れる魔王。思った異常にショックを受けたらしい。
すると話を聞いていた一人の魔族が口を挟んだ。
「いやでも、一般の魔族は魔王さまやハクイ様のように結界を扱える程の魔力は持ってないし……」
魔王とハクイはそう言えば、という顔をした。
青年はその魔族に「そうなの?」と聞く。
すると少し驚きつつも
「はい、魔力と邪気は比例するのですが、持っている邪気が濃い程、魔力も強いんです。結界は高等魔術なので魔王さま方ほどの魔力の持ち主でなければ到底扱えません」
「ふーん、そうなのか。じゃあ仕方ないと言えば仕方ないのか」
その言葉に魔王とハクイは密かにホッとした。
そんな事とは露知らず青年は赤ん坊に視線を移す。
赤ん坊は素っ裸でオムツの代わりなのか布がいくえにも巻かれていた。
(一応真新しい物に取り替えてはいるのか、身体も拭いてあげてはいるみたいだが、無知ながらにも最善をつくしたにしてはあまりに酷い。これは正直生きていた事が奇跡だ早めに)
その赤ん坊を更に大きめの布で包むようにくるんでいる。
(……ん?)
ふと赤ん坊の顔色が気になった。
「あのすみません。この子拾ったのっていつ?」
「確か三日前、だったか?」
「えぇ、そうですね。三日ほど前です」
「その間、この子どうしてたんで? 食事とか」
「それが分からなくて一番困ってたんだ。肉を近付けても嫌がるし」
「肉っ」
「仕方ないので水を、その水もそのまま飲ませていいのか不安だったので一応沸騰させたのを冷ましてから花の」
「今すぐ乳母を、もしくはミルクを」
ハクイの言葉を青年が遮る。その顔は酷く真剣だ。
「う、乳母?」
「ミルク?」
魔族達は訳がわからないと言う様子で、まぬけにもポカンと呆ける。
(て、ある筈ないし知る筈もないか)
「とにかく今すぐ隣の、人間の領土まで行って粉ミルクと哺乳瓶を、中央街なら必ずあるはず、あとオムツも大量に買ってきて下さい」
「オムツ?」
「赤ちゃんのパンツです。布の」
「布なら巻いてるが?」
「~っ違う!あぁもう俺が買って来ますから!!」
「ちょっちょっと待て!」
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