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第一章
藁にもすがる07
しおりを挟む イルファー様は、ルビィドに対して厳しい言葉をかけていた。
彼が、言い訳を作って、家に戻ろうとしない。その事実を指摘したのだ。
図星を見抜かれたからか、ルヴィドは目を丸くしている。自分の弱さを認めるということは、厳しいことだ。その苦しみを、今弟は噛みしめているのだろう。
「……イルファー様の言う通りです。僕は自分の弱さに甘えていたのですね」
「ああ、その通りだ」
少しの沈黙の後、ルヴィドはゆっくりとその顔を上げた。
その面持ちは、今までの自信がなさそうな表情ではない。何かを決意したような表情に、変わっていたのである。
「いい顔をするようになった……というよりも、今までのお前の顔がつまらないものだったというべきか」
「そうかもしれません」
「それで、お前は今自分が何をするべきかわかっているのだろうな?」
「ええ、わかっています。この家……フォルフィス家の人間に戻ります」
ルヴィドの口にした言葉に、私は驚いた。
話の流れからすれば、それはとても自然なことである。だが、それでもとても衝撃を受けてしまうのだ。
家出した弟が戻って来る。その事実は、喜ばしいことだ。長年の思いが込み上げてきて、私の心を揺さぶっているのだろう。
「今までお世話になりました……」
「違う」
「え?」
頭を下げた弟の言葉を、イルファー様は否定した。
そこで、否定したことには私も少し驚いている。
まさか、ここまできて弟がフォルフィス家に戻ることを許さないというのだろうか。いや、流石にそれはないはずである。
それなら、お世話になったのはこちらとでもいうのだろうか。しかし、それはイルファー様には似合わない台詞である。
「私とお前に、関りなど一切存在しなかった。お前は家出をして、他国にいて、そこで慎ましやかに生活していたのだ」
「それは……」
「私に私兵は存在しない。それを理解しろ」
「……はい」
イルファー様が言いたかったことは、私が予想したようなことではなかった。
彼が私兵を持っていることは、誰にも知られてはいけないことである。彼は、それをルヴィドに今から示したのだ。
「……」
ルヴィドは、少し悲しそうにしながら後退していった。
彼にとっては、家出してからずっと仕えていた主との別れなのだ。それは、かなり辛いことだろう。
しかも、今後二人は元の関係として出会うことはない。弟の心中を考えれば、とても悲しいはずである。
「……」
一方のイルファー様は、特に表情を変えていなかった。
もしかしたら、この別れは彼にとってはありふれた別れでしかないのかもしれない。今までも、こういう別れを彼は経験してきたのではないだろうか。その雰囲気が、そう物語っているようなのだ。
「さて……もう一仕事といくか」
「え?」
そこで、イルファー様は立ち上がった。
どうやら、まだやるべきことがあるようだ。
彼が、言い訳を作って、家に戻ろうとしない。その事実を指摘したのだ。
図星を見抜かれたからか、ルヴィドは目を丸くしている。自分の弱さを認めるということは、厳しいことだ。その苦しみを、今弟は噛みしめているのだろう。
「……イルファー様の言う通りです。僕は自分の弱さに甘えていたのですね」
「ああ、その通りだ」
少しの沈黙の後、ルヴィドはゆっくりとその顔を上げた。
その面持ちは、今までの自信がなさそうな表情ではない。何かを決意したような表情に、変わっていたのである。
「いい顔をするようになった……というよりも、今までのお前の顔がつまらないものだったというべきか」
「そうかもしれません」
「それで、お前は今自分が何をするべきかわかっているのだろうな?」
「ええ、わかっています。この家……フォルフィス家の人間に戻ります」
ルヴィドの口にした言葉に、私は驚いた。
話の流れからすれば、それはとても自然なことである。だが、それでもとても衝撃を受けてしまうのだ。
家出した弟が戻って来る。その事実は、喜ばしいことだ。長年の思いが込み上げてきて、私の心を揺さぶっているのだろう。
「今までお世話になりました……」
「違う」
「え?」
頭を下げた弟の言葉を、イルファー様は否定した。
そこで、否定したことには私も少し驚いている。
まさか、ここまできて弟がフォルフィス家に戻ることを許さないというのだろうか。いや、流石にそれはないはずである。
それなら、お世話になったのはこちらとでもいうのだろうか。しかし、それはイルファー様には似合わない台詞である。
「私とお前に、関りなど一切存在しなかった。お前は家出をして、他国にいて、そこで慎ましやかに生活していたのだ」
「それは……」
「私に私兵は存在しない。それを理解しろ」
「……はい」
イルファー様が言いたかったことは、私が予想したようなことではなかった。
彼が私兵を持っていることは、誰にも知られてはいけないことである。彼は、それをルヴィドに今から示したのだ。
「……」
ルヴィドは、少し悲しそうにしながら後退していった。
彼にとっては、家出してからずっと仕えていた主との別れなのだ。それは、かなり辛いことだろう。
しかも、今後二人は元の関係として出会うことはない。弟の心中を考えれば、とても悲しいはずである。
「……」
一方のイルファー様は、特に表情を変えていなかった。
もしかしたら、この別れは彼にとってはありふれた別れでしかないのかもしれない。今までも、こういう別れを彼は経験してきたのではないだろうか。その雰囲気が、そう物語っているようなのだ。
「さて……もう一仕事といくか」
「え?」
そこで、イルファー様は立ち上がった。
どうやら、まだやるべきことがあるようだ。
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