魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。

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第一章

藁にもすがる06

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「一応人間について書かれた物は何冊か見付け、人間について詳しい者も何人かいたんだが……さすがに人間の育て方となるとあてにならなくてだな」
「あーなるほど。でも魔族の子供とあんまりかわらないんじゃないですか?」

青年が何気無く言うと、魔王と赤ん坊あやしに奮闘するハクイとその他数人の魔族がキョトンとした。

「え? なんです? 俺なんか変な事いいました?」

触れてはいけない話だったのか?と、思わず動揺する。
すると魔王は

「魔族は子育てなどしないぞ?」

当たり前のようにそう言った。

「はい?」

今度は青年がキョトンとする番だった。

「と言うより《する必要がない》と言った方が正しいですね」

いつの間にかガビガビになっていた髪を洗い終え、サラサラヘアーに戻っていたハクイが言う。

「魔族は子供が生まれたら聖なる泉の傍に赤ん坊を預けるんです」

青年は、なんとも間抜けな顔をした。

「え? 魔族が? 聖なる泉に? 預ける?」

「えぇ、魔族は普通邪気の塊みたいなものなのですが、生まれたばかりの魔族の子は邪気を一切持っていないのです。その状態で邪気が充満する魔族の土地や親との生活は難しい。さすがに人間のように死ぬ事はありませんが、健康的に育つ事は望めません。その為親は、邪気のない聖なる泉の傍に赤ん坊を預けるのです」

「え? それで本当に大丈夫なんですか?誰が面倒をみるんです? ……て、言うか聖なる泉とやらに魔族って近付けるんですか? 聖なるなんでしょ? 邪気の塊が近付いて平気なんですか?」

「おかしな事を言いますね。聖なる泉ですよ?生きとし生きるもの全てにおいて聖なる泉です」

(はぁなるほど……いや、ワケわからん)

話を聞いていた青年の顔が徐々に険しくなったのも無理はない。

「とにもかくにも大丈夫です。何しろ魔族の子ですから、あとは勝手に育ちます」
「いったい全体その自信は何処から」
「実際14歳になる頃には自然と魔族の土地に自ら戻って来るのですよ」

ハクイは少し自慢気に言う。

「そうそう。どっからともなく帰って来るんだよなぁ。ただ誰がどいつの子なのかサッパリわからんのだけど」
「生まれて直ぐ、泉の傍に預けてしまいますからね。さすがの魔族もサッパリですよ」
「そもそも我らは一人一人が長生きだからめったに子作りなどしないしなぁ。そのせいもあって自分に子供が出来た事など直ぐ忘れてしまう」
「あぁ分かります分かります。子供がいないのが当たり前過ぎて、出来た事忘れてしまいますよね~」
「私も自分の親の顔なぞ知らんしな」
「あぁわたくしもです」

ハッハッハッハッハッハッ
ハッハッハッハッハッ

魔族達にとってはあるあるなのか、その場にいた全員が大した事無さげに笑っている。


そんな中、青年の表情だけが密かに凄みを増した。


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