5 / 168
第一章
藁にもすがる04
しおりを挟む「良かったまだ生きているぞ」
真っ裸に布をくるんだだけの赤ん坊が土草の上にただ捨てられていた。
ぎゃんぎゃぎゃんぎゃ泣き叫ぶ赤ん坊にホッとして。
魔王はすぐさま手をかざし呪文も無しに結界をはる。
「よし、結界を何重にもしておいたから邪気にやられる心配はないだろう」
「いや、やり過ぎです。これじゃあ抱き上げる事も出来ないですよ」
赤ん坊を抱き上げようとして、触れる間際、ジュッといい音をたててハクイの綺麗に伸ばされた長い爪と白い指が焦げた。
「悪い。だが人間の赤ん坊がどれほどか弱いのか想像もつかんし、森の邪気の影響を思うとな。こうすれば問題ないだろう?」
言うと魔王は泣きじゃくる赤ん坊を魔力で宙へと浮かし、自分達の中心に移動するとピタリとその動きを止めた。
宙に浮かんだ赤ん坊を丸い紫の光がおおっている。
「結界が見えるぐらいはるなんて……結界とは何か解らなくなりますね。いや、なんかもうなんでしたっけ結界って? 万能術?? それで、どうなさるおつもりですか? 人里に還します?」
ハクイは呆れた顔をした。
「人の里にこっそり置いて来たところで拾ってくれる者がいなければ結局この赤ん坊は死ぬ。とりあえず連れ帰るぞ。話はそれからだ」
「え? 連れ帰るんですか? 魔王城はここより邪気があるんですよ??」
さっさと歩き出す魔王にハクイが慌ててついていく。
「案ずるな。《これ》の部屋には結界をはる」
「……誰も入れない程の強い結界はやめて下さいね」
そんなこんなで今に至るのだった。
「はぁ、それでどうにもならなくなって、人間の俺を捕まえて来たと。事細かに長い長ーい説明有り難うございました」
「そうか、わかってくれたか」
魔王は話を終え満足そうに豪華な椅子に座った。
「で、なんで俺なんです?」
「それは貴方が真っ昼間の誰もが一番忙しい時間に、誰よりも一番暇そーにそこら辺をプラプラ散歩していたので、あっコイツなら連れ帰ってもだーれも困らないなと判断したからです」
魔王の後ろで今度は赤ん坊に長い髪をしゃぶられているハクイはなんとも間抜けなのだが、話終えたハクイはドヤ顔だ。
その顔に軽く苛つきつつ、青年は口を開く。
「他に方法はないんですか? 言っときますけど俺まだ未婚で子供もいないんで、こんなまだ本当に赤ん坊って感じの子、面倒みれる自信ないですよ」
2
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?
ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。
ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。
そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。


例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる