魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。

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第一章

藁にもすがる03

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まぁさっきのかくかくしかじかでは意味が分からないと思うので説明すると、あの赤ん坊は魔族と人間の暮らす境目となっているネーベル森林で見付けたらしい。
この森林は人間が浴びると死ぬとされる邪気が充満している為、普通の人間なら誰も近付かないのだが……。
なんでも人間側の人里近くには、年老いた者や生きる事を諦めた者が自殺をしに来たり、怪しい人間が不用になった者を捨てに来たり、育てられず我が子を捨ていく親が来るそうだ。
それを放っておくと死体が増えて、魔族が人間を殺していると言う根も葉もない噂があちらこちらから立ち(それでなくとも普段から色々好き放題言われているというのに)大変な事になるので、毎回清掃をかねて巡回しているらしい。
その日も魔族達は人間に見付からぬよう気を付けながら人里近くの森の中を巡回していた。

「わざわざ毎回魔王さままでいらっしゃらなくとも」

白いローブに身を包み、魔族の男ハクイは、いかにもといった魔族の王を咎めるように言う。

「そうもいかない。もしまだ生きている者がいたらどうする? この充満する邪気から身を守ってやれるのは私だけだぞ?」
「確かに魔王さま程の魔力があればいくらでも結界をはれましょう。ですがわたくしも結界をはれるだけの魔力は持ち合わせていますし、それに」

ハクイはうんざりと言う顔で足下を見た。

「どうせ死んでいます」

そこには干からびて骨だけになった人間だったもの。
ハクイは直ぐにそばにいた家来に命じて土に埋めさせる。

「それはそうだが、もしかしたら、と言う場合もある」
「それは何億分の一の確率でしょう」

魔王とハクイ、その家来は亡骸を弔うとまた歩き出す。

「それにしてもどうして人間は、こうも死に急ぐんでしょうね。それでなくとも寿命が短い種族だというのに」
「全くだ。もっと命を大切にして貰いたいものだな。迷惑極まりない」
「赤ん坊を捨てるなど言語道断です。人間の赤ん坊は魔族と違ってすぐ死んでしまうのですから」
「あぁそうだな。ここ最近、赤ん坊の遺体が多い。何かしらの事情があって仕方なくであろうが」
「それでもです。何か他に方法が……」

その時、そばの草木から別の家来が血相をかえて現れた。

「ハッハクイ様! たたた大変です! あああああああ赤ん坊が!」
「赤ん坊がどうしっ」
「まさか!」

二人は顔を見合わせると同時に走り出した。


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