魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。

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第一章

藁にもすがる02

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「ハハハハハで、それで俺がここに連れて来られたと?」

驚き過ぎて力なく乾いた棒読みの笑い。
広々とした魔王城の一室で、冴えない顔をした一人の人間の男が床に正座をしていた。
目の前にはいかにもといった風貌の黒衣の男。あっいや、金や銀や赤や色鮮やかな装飾もしているんだが、基本黒って感じの。
簡単に言うと《魔王》がいた。
大変威厳のある。何故かイケメンの。冴えない人間の男はそう思うと少しイラッとした。

(なんだよ魔王なら魔王らしくもっと凶悪で狡猾な顔してろよ。髪とかなんでそんなサラサラ艶々の長髪なんですか? 天使の輪出来てますけど? なんですか来世は魔王やめて天使になる気ですか?)

膝辺りまであるその長髪は、本来女性へ向けて使う紫光する黒髪と表現してもおかしくないほどだ。
そんな事を思っている間、嫌でも気になるのは魔王の後ろでぎゃんぎゃん泣き叫ぶ赤ん坊の声。
偉そうに腕を組んで仁王立ちする魔王も、その真っ赤な瞳を時おり背後へ向けてチラチラ気にしている。
その後ろでは、家来達が必死に赤ん坊をあやそうとしているが、あやし方がわからないのかクッションの上で泣き叫ぶ赤ん坊の周りをオロオロするばかりだ。
その赤ん坊は何処からどうみても人間だった。

「頼む。どうか《あれ》の面倒をみてくれ。我等にはどうにもならんのだ。このままではみな寝不足で倒れてしまうし、赤ん坊も死んでしまう」
「はぁ……。あの、てかなんでそもそも人間の赤ん坊がここに?」

「それは《わたくし》が説明致しましょう」

魔王の後ろで赤ん坊をあやそうとして、その白く長い髪を思いっきり引っ張られて痛そうにしている美しい男が言った。

「実はですね。イタッ、魔族と人間のイタッ、境になって、イッ、森の、アタタタ」

「……あぁ、《ハクイ》気にするな。私が説明するから」
「そ、そうですか?すみまイタッせん。あとは宜しくお願いします。イッタア」
「うむ。が、頑張れよ」
「が、頑張って」

思わず人間の男もそう言っていた。

「さて、本題に入ろうか少年」
「え、いや俺、青年って歳だと思いますけど?」
「何?お前は人間の癖に千年は生きていると言うのか?」
(あ、これ、根本的に色んな基準が違うわ)

少年いや本当は青年の男は、魔王が一応自分を人間だと言う事を踏まえた上で少年と言ってくれている事に気付いた。
魔族からみたら自分なんて、本当は少年ですらないのかも知れないと。

「いやすみません少年でいいです。本題入って下さい」
「そうか?実はかくかくしかじかでな」


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