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*生け贄の双子
生け贄の双子#2
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人間達は災害は山神様の祟りだと恐れていたが、実際の事は誰も知らなかった
だか、人間達の予想通り山神様には不思議な力があった
山を荒し、汚すも者達には怒りの鉄槌を
だが、それだけではなく人間達も知らない秘密の力があった
山神様の力はまだ未知数だが、紅と青の成長は山神様のその力によって止められた
この山を共に守る者として、山神様の娘として、生け贄として喰わず愛情を与えられながら育てられ何十年、何百年の時を紅と青は山神様と共に動物達をそしてこの山を守り続けてきた――…
2×××年×月×日
草花と木の森の匂い
大地を覆い尽くす土の香り
通り過ぎていく爽やかな風
白く綺麗な毛並みの狼に又借り、大自然を感じながら、山の中の草木を分けて慎重に進んで行く
人間達に気付かれたら皆に危害が及んでしまう
細心の注意をしなければ…
私達が向かっていたのは、この山に幾つもある見張り場
そこには既に私の妹の青が目を光らせ山の様子を見張っていた
青が私達の存在に気付いて声を掛けてきた
青「紅」
私は狼の背から降り、青の隣から山の梺を見据えた
そこには数人の人間達の姿があった
紅「様子は?」
青「あそこでずっと喋ってる」
人間達は山に入ってくる気配はまだなく、山を見ながら何か話し込んでいるようだった
手に武器は持っていない様だけど…風に流れてくるこの微かな匂い…
クロ「相手はたかが2人だろ?
こんな所で黙って見てねぇで俺とハクで噛み殺してきてやるよ」
グルルル…と喉を唸らせる黒い毛並みの狼、名はクロ
今にも飛び出して噛み殺しに行きそうな顔つきで人間達の方を牙を見せながら鋭く睨んでいる
クロの気持ちは分からなくはない
でもさっきから微かに気になるこの匂い…
紅「駄目、それに風のせいでハッキリしないけどまだ人間の匂いがする」
青「あいつ等だけじゃないってことだね…
クロ落ち着きな。無闇に飛び出しても無駄死にするだけだから」
青は冷静にクロを宥めた
紅「ハク何人居る?」
私の隣に並ぶ白い毛並みの狼、名はハク
私達も鼻は利くけど、私達の中で一番鼻が利くのはこのハクだけ
ハクはクンクンと鼻を動かして確かめる
ハク「あの2人を合わせて6人居るな」
青「6人か…もしかしたらまた何か武器を持ってるかもしれない」
クロ「少し火薬の匂いが風に混ざってるぜ
確実に持ってるぜこれは」
紅「私もそれは感じる
クロの言う通り持ってる可能性が高い
まずいね…私達にはあの武器は厄介だから
念の為、母さん達に知らせよう」
人間達が持ってくるあの独特な形の武器
今まで何度あの武器で仲間達が苦しめられ死んでいったことか
人間達が厄介なのはあの武器のせいが大きい
母さん達に伝える為にそこから立ち去ろうとした時だった
ハク「待て。戻って行くぞ」
クロ「どうやら偵察だけだったみたいだな
けっ、暇な奴らめ」
青「今日偵察でもまたいつかここに来るはず…」
紅「恐らくね…。戻って母さん達に知らせよう
行くよ」
近年、人間達は執拗にこの山を狙ってきている
何もなく終わるわけがない
ハクとクロの背に又借り、私達はそこを後にして山をかけ登り、母さん達の所に向かった
白い狼ハクと黒い狼のクロ
私のパートナーのハクそして青のパートナーのクロ
私達がこの山に来た時から一緒に過ごしずっと隣に居る大切なパートナーだ
兄妹と言っても過言ではない
そしてこの山は私達が育ち家でもある大切な山
私達は知らないけど、母さん達の話によると大昔自分達の私利私欲の為、母さん達、人間は母さん達の事を山神様と呼んでるらしいけど、その母さん達に村人が生け贄として私達を差し出したそうだ
残酷な人間達に変わり、母さんや父さん、そしてこの山に住みつく動物達が私達を立派な狼として育ててくれたそう
だからこの山に住む動物達は皆、大切な家族であり仲間であり、この山は私達にとって掛け替えの無い大切な場所なのだ
母さん達を始め、動物達も人間を嫌っているが、私と青も人間が大嫌いだ
自分達の為に私達はただ利用され捨てられた
生きることさえ許されず、この世に生まれ落ちたのに愛されることすらなかった
私達を愛してくれたのは父さんと母さんだけだった
そしてそんな人間達が今度は私達の大切な山を奪おうとやってくる
そんな人間達から長い月日の中、私達は山を守り続けてきた
木々の間を通り抜け風のように山を登って行く
早く母さん達の所に行かなくちゃ…
この山は今、再び人間達に狙われている
1度は落ち着いたものの、人間達の世代が変わったせいか、また騒がしくなってきている
この山を削り、新しい土地を作るらしい
その為に最近は頻繁に人間達がやって来るようになった
その為にこの山に住む邪魔な動物達を躊躇なく殺しに来る
いつの時代も自分達の利益しか考えない欲深い人間達が本当に心の底から憎悪を抱くくらいに嫌いだった
もしこの山がなくなったら…皆が居なくなったら…なんて考えたくもない
『紅!青!』
名前を呼ばれて私達は足を止めた
そこには山の動物達が集まって居た
紅「皆!ここで何してるの?」
『また人間が来たの?』
集まっていた小動物達が不安そうな表情で尋ねてきた
紅「うん。でも大丈夫。もう居ない」
『俺達は人間なんか嫌いだ』
『あいつ等、俺達の事をゴミのようにしか扱わない』
『それに紅と青を捨てたんだ。許さない』
クロ「同感だな
俺達からしたらあいつ等の方がゴミ同然だな」
紅「私達も人間は嫌いだ」
人間なんて残酷な奴等ばっかりだ
でも自分の中に少しでもその血が流れているかと思うと吐き気がする
ハク「なんて顔してやがる。お前は狼だ」
紅「うん。ごめん」
青「紅」
紅「あ…ごめん皆、私達行かなきゃ」
『待って紅、青。これを山神様に渡して』
青「これは花と薬草…わざわざ集めてくれたの?」
『山神様に。早く良くなりますように』
『私達はずっと山神様を待ってる』
『きっと昔のように山を守ってくれるって信じてる』
紅「皆…ありがとう。伝えておく」
そして私達は山をかけ上がっていった
だか、人間達の予想通り山神様には不思議な力があった
山を荒し、汚すも者達には怒りの鉄槌を
だが、それだけではなく人間達も知らない秘密の力があった
山神様の力はまだ未知数だが、紅と青の成長は山神様のその力によって止められた
この山を共に守る者として、山神様の娘として、生け贄として喰わず愛情を与えられながら育てられ何十年、何百年の時を紅と青は山神様と共に動物達をそしてこの山を守り続けてきた――…
2×××年×月×日
草花と木の森の匂い
大地を覆い尽くす土の香り
通り過ぎていく爽やかな風
白く綺麗な毛並みの狼に又借り、大自然を感じながら、山の中の草木を分けて慎重に進んで行く
人間達に気付かれたら皆に危害が及んでしまう
細心の注意をしなければ…
私達が向かっていたのは、この山に幾つもある見張り場
そこには既に私の妹の青が目を光らせ山の様子を見張っていた
青が私達の存在に気付いて声を掛けてきた
青「紅」
私は狼の背から降り、青の隣から山の梺を見据えた
そこには数人の人間達の姿があった
紅「様子は?」
青「あそこでずっと喋ってる」
人間達は山に入ってくる気配はまだなく、山を見ながら何か話し込んでいるようだった
手に武器は持っていない様だけど…風に流れてくるこの微かな匂い…
クロ「相手はたかが2人だろ?
こんな所で黙って見てねぇで俺とハクで噛み殺してきてやるよ」
グルルル…と喉を唸らせる黒い毛並みの狼、名はクロ
今にも飛び出して噛み殺しに行きそうな顔つきで人間達の方を牙を見せながら鋭く睨んでいる
クロの気持ちは分からなくはない
でもさっきから微かに気になるこの匂い…
紅「駄目、それに風のせいでハッキリしないけどまだ人間の匂いがする」
青「あいつ等だけじゃないってことだね…
クロ落ち着きな。無闇に飛び出しても無駄死にするだけだから」
青は冷静にクロを宥めた
紅「ハク何人居る?」
私の隣に並ぶ白い毛並みの狼、名はハク
私達も鼻は利くけど、私達の中で一番鼻が利くのはこのハクだけ
ハクはクンクンと鼻を動かして確かめる
ハク「あの2人を合わせて6人居るな」
青「6人か…もしかしたらまた何か武器を持ってるかもしれない」
クロ「少し火薬の匂いが風に混ざってるぜ
確実に持ってるぜこれは」
紅「私もそれは感じる
クロの言う通り持ってる可能性が高い
まずいね…私達にはあの武器は厄介だから
念の為、母さん達に知らせよう」
人間達が持ってくるあの独特な形の武器
今まで何度あの武器で仲間達が苦しめられ死んでいったことか
人間達が厄介なのはあの武器のせいが大きい
母さん達に伝える為にそこから立ち去ろうとした時だった
ハク「待て。戻って行くぞ」
クロ「どうやら偵察だけだったみたいだな
けっ、暇な奴らめ」
青「今日偵察でもまたいつかここに来るはず…」
紅「恐らくね…。戻って母さん達に知らせよう
行くよ」
近年、人間達は執拗にこの山を狙ってきている
何もなく終わるわけがない
ハクとクロの背に又借り、私達はそこを後にして山をかけ登り、母さん達の所に向かった
白い狼ハクと黒い狼のクロ
私のパートナーのハクそして青のパートナーのクロ
私達がこの山に来た時から一緒に過ごしずっと隣に居る大切なパートナーだ
兄妹と言っても過言ではない
そしてこの山は私達が育ち家でもある大切な山
私達は知らないけど、母さん達の話によると大昔自分達の私利私欲の為、母さん達、人間は母さん達の事を山神様と呼んでるらしいけど、その母さん達に村人が生け贄として私達を差し出したそうだ
残酷な人間達に変わり、母さんや父さん、そしてこの山に住みつく動物達が私達を立派な狼として育ててくれたそう
だからこの山に住む動物達は皆、大切な家族であり仲間であり、この山は私達にとって掛け替えの無い大切な場所なのだ
母さん達を始め、動物達も人間を嫌っているが、私と青も人間が大嫌いだ
自分達の為に私達はただ利用され捨てられた
生きることさえ許されず、この世に生まれ落ちたのに愛されることすらなかった
私達を愛してくれたのは父さんと母さんだけだった
そしてそんな人間達が今度は私達の大切な山を奪おうとやってくる
そんな人間達から長い月日の中、私達は山を守り続けてきた
木々の間を通り抜け風のように山を登って行く
早く母さん達の所に行かなくちゃ…
この山は今、再び人間達に狙われている
1度は落ち着いたものの、人間達の世代が変わったせいか、また騒がしくなってきている
この山を削り、新しい土地を作るらしい
その為に最近は頻繁に人間達がやって来るようになった
その為にこの山に住む邪魔な動物達を躊躇なく殺しに来る
いつの時代も自分達の利益しか考えない欲深い人間達が本当に心の底から憎悪を抱くくらいに嫌いだった
もしこの山がなくなったら…皆が居なくなったら…なんて考えたくもない
『紅!青!』
名前を呼ばれて私達は足を止めた
そこには山の動物達が集まって居た
紅「皆!ここで何してるの?」
『また人間が来たの?』
集まっていた小動物達が不安そうな表情で尋ねてきた
紅「うん。でも大丈夫。もう居ない」
『俺達は人間なんか嫌いだ』
『あいつ等、俺達の事をゴミのようにしか扱わない』
『それに紅と青を捨てたんだ。許さない』
クロ「同感だな
俺達からしたらあいつ等の方がゴミ同然だな」
紅「私達も人間は嫌いだ」
人間なんて残酷な奴等ばっかりだ
でも自分の中に少しでもその血が流れているかと思うと吐き気がする
ハク「なんて顔してやがる。お前は狼だ」
紅「うん。ごめん」
青「紅」
紅「あ…ごめん皆、私達行かなきゃ」
『待って紅、青。これを山神様に渡して』
青「これは花と薬草…わざわざ集めてくれたの?」
『山神様に。早く良くなりますように』
『私達はずっと山神様を待ってる』
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紅「皆…ありがとう。伝えておく」
そして私達は山をかけ上がっていった
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