君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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空が高くどこまでも遠く感じる
学校何も言わずに休んじゃった…
こんなに1人でのんびりするのは初めてかな
なんだか色んな気持ちが空に吸い込まれていきそうな気がする
奏叶と湊はどうなったのかな…
2人共お節介みたいだから私が居なくて心配してるのかな…
それとも逆に何も気にされてなかったらどうしよう
そうだったら悲しい…
2人の存在は今の私にはとても大きなものだから…
…今の私にはこれが2人の為に出来る精一杯の事
どうか上手くいきますように…
それにしても平日の公園って誰も居ないんだなぁ
公園でよく遊んだな…楓と…
でもそれはもう過去の事なんだ
真琴の事も…過去の事なんだ…
誰も居ないなら少しくらい平気かな…
私は家から持ってきたオルゴールを出してゆっくりネジを回した
オルゴールから独特の優しいメロディが流れる
どこか遠い記憶の中に吸い込まれていきそうな淡い音色…
この音色は…誰にどこまで届くんだろう

―――――…

湊「おいどこ行くんだよ!」

奏叶「こっちだって!この先に絶対千菜は居る!音が聞こえるんだ!」

微かに聞こえる音を頼りにがむしゃらに走って向かうと大きな公園に出た

湊「本当だ…何か聞こえる」

奏叶「居た!千菜だ!」

俺は湊と2人でベンチに座ってる千菜の所に走った

奏叶「千菜!!」

俺が大きな声で千菜を呼ぶとこっちに気づいた

千菜「奏叶…湊…」

千菜の姿を見て何も無くて心から安心した

千菜「なんで2人がここに居るの?学校は?」

湊「あぁ!?学校なんて、んなもんどうでもいいだろ!学校にも来ねぇ、電話しても繋がらねぇで何やってんだよ!」

湊の一言に気が付いたように鞄を漁る千菜

千菜「ケータイ忘れたみたい…」

湊「はぁ!?だからってなんでこんな所にいんだよ!こっちは何かあったかとすげぇ心配してかなと一緒に町中探し回ったんだぞ!分かってんのか!」

千菜「…2人は仲直りしたの?」

湊「はぁ!?んな事より自分の心配をしろよ!どんだけ人に心配かけてんのか分かってんのか!?」

怒ってる湊の一方で俺はさっきの千菜の言葉に何処か違和感を感じた

奏叶「…千菜もしかして…俺達を仲直りさせようとしたの?」

湊「は!?」

黙ったままうつむく千菜を見てそれは確信に変わった

奏叶「そうなんでしょ」

千菜「…ごめん。私本当は知ってたの」

湊「何だよいきなり…知ってたって何を…」

千菜「2人が…私の事で喧嘩していること」

千菜のその言葉を聞いて俺と湊は驚きを隠せなかった

奏叶「どうゆうこと?」

俺が聞くと千菜は真実を話してくれた

千菜「…最後に3人で一緒に帰ったあの日。
家に送ってもらった後、何だか少し不安で…2人の後を追いかけた
そしたら大きな湊の声が聞こえて咄嗟に隠れたの
話を聞いてたら奏叶は湊の事を思って私を差し出そうとしてて…湊はそれに怒ってる事が分かった…
2人が喧嘩した原因が私だと分かってこのままじゃ駄目だって…なんとか仲直りさせたいと思ったの」

湊「って事はお前…俺の気持ちはあの時から知ってたのか!?」

千菜「うん。
…急に話は変わるんだけど私ねここに来る前に真琴の事故現場に行ってきたの」

奏叶「真琴って…亡くなった彼氏?」

千菜「うん。今まで怖くて…辛くてずっと避け続けてきたけど…今日行ってみたら思った以上に平気だったの」

奏叶「どうゆうこと?」

千菜「私は1人で事故現場に行ったけど心の中では2人の事を思い出しながら行ったらそんなに怖く感じなかった
1人でもそこの道を通ることが出来たの
この意味…2人なら分かるでしょ」

湊「それって…俺達のお陰だって?」

千菜「うん…湊と奏叶がいなかったら私はずっと前に進むことが出来なかったと思うの
でも1人でも行けたってことは私の中で2人はそれだけ大きく大切な存在だったからだよ
私にとって2人はとても大切な人…
その人達が私の事で喧嘩してしまうなんて私は嫌だった
どうしてもなんとかしてあげたかった
…だから私は奏叶と別れる決意をした
そして今日…相手の事を本当に大切にする2人だから…私が学校に行かなかったら2人は心配して探しに来てくれると思ったの
少しでも仲直りするきっかけを作りたかったの…
でも…町中走り回るくらい心配かけてごめんなさい…」

奏叶「…………」

湊「………」

あの時の湊との会話を千菜が聞いてたなんて…
千菜が俺達を仲直りさせるために色々考えて…1人で無理させて…

千菜「さっきも…言ったけど2人はこんな私と一緒に居てくれる。それが何より嬉しくて奏叶と湊が笑ってる時が凄く好きだった
だから私は…」

奏叶「もういいよ。千菜の気持ちは凄く…伝わったから。千菜にこんな事させてごめんね
それから湊。こんな事これ以上続けたら千菜の思いが無駄になる
…お前が千菜の事好きって知った時、凄く動揺した。でも俺にとって湊も凄く大切な奴だから幸せになってほしいと思ったんだ
でも…結局俺の独りよがりだった
お前が怒って当然だと思う。悪かった」

湊「…俺も悪かった。かなの気持ちも分からなくはねぇからな
けどあんなやり方は本当に怒ってんかんな」

奏叶「分かってる。ごめん
じゃぁこれで仲直りな」

湊「おう」

俺達は笑い合って拳を合わせた

千菜「湊。湊の気持ち知ってたのに知らないフリしてごめんね。でも湊の気持ちは凄く嬉しかった」

湊「それって俺じゃダメってこと?」

千菜「…湊の事は好き。でもそれは友達として…」

湊「…後悔するかもよ」

千菜「…そうかもね。でもこれが今の私の気持ちだから。ありがとう湊
あの…これは私の我が儘で湊は嫌かもしれないけど…私は湊と変わらず友達で居たい…」

湊「…嫌なわけねぇじゃん
彼氏にはなれなくても、千菜の1番の友人って事でこれからもよろしく」

千菜「…ありがとう湊」

千菜が笑うと湊も笑った
少し寂しそうな顔をしていたけど何処かすっきりした笑顔だった
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