バンパイアガール

秋月

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*魂を狩る者

魂を狩る者#5

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リーダーと呼ばれる男に刃を突き付ける唯奈
その表情は戸惑いと焦りに満ちていた

リーダー「俺に刃を向けるとは何のつもりだ依月?」

刃を突き付けられてるのになんでこんなに冷静なんだよ、この人…
じゃなくて唯奈…っ
こんなことして大丈夫なのかよ…っ

依月「…蓮斗は殺させない」

陽香「やめなさい依月!
リーダーにそんな事して許されると思ってるの!?」

リーダー「陽香の言う通りだな
お前の実力は知っているが俺には通用しないぞ?
それに俺を殺せるほどお前は非情にはなれないだろ
組織を裏切ったらお前への援助も打ち切られ、待っているのは追放か死のみだ
組織から追放されてバンパイアの餌食や自我のない化け物になるくらいなら俺はお前を殺す方が良いと思っている
依月、お前は組織の秘密を口外して俺に刃を向けた
どうゆう事か分かっているよな?
死ぬ覚悟が出来てると捉えていいんだな?」

依月「…私だってリーダーを殺したくない
お願いリーダー分かって…
蓮斗を殺さないで…」

悲痛とも言えるくらい小さな声だった
俺のせいで唯奈が責められるなんて最悪だ…
そしてそんな時に何も出来ない自分自身が不甲斐なかった

陽香「依月…」

リーダー「…例え俺が見逃すとしてもどちらか1人…いや、依月は組織にとっても優秀な人材だ
無関係でしかも組織や俺達の秘密を知ってしまったそいつだけは殺さなきゃならない」

依月「お願いリーダー…」

唯奈が泣いている…
俺のせいで唯奈が苦しんでる…
そしてリーダーと呼ばれる男は涙を流す唯奈から陽香さんへ視線を移した

リーダー「…陽香、あれだけ厳しいお前も妹には甘いんだな」

陽香「…そんなのお互い様でしょ?」

リーダー「依月、剣をしまえ
俺はお前を苦しめる為に来たんじゃないしな
安心しろ
お前の事もこいつの事も見逃してやるよ」

依月「リーダー…っ」

さっきまで本気で俺の事を殺す気でいたのは間違いないのに、見逃すなんて…

蓮斗「どうゆう事ですか」

リーダー「俺は依月の泣き顔を見てまでお前を殺そうとは思わない
依月は俺にとっても妹みたいな存在だからな
だけど覚えておけ
もし秘密を喋ったらその時は必ずお前を殺す
そして口外してお前を庇った依月もな」

蓮斗「そんな事絶対にしない」

リーダー「どうやらその言葉に二言は無いようだな」

依月「リーダーありがとう…」

リーダー「秘密を知ってるのは俺達だけだ
組織には俺がうまくやるし、お前等が心配する必要はないよ
さて、俺は仕事に戻る
依月、陽香、くれぐれもバンパイアに食われるなよ
お前も依月に感謝するんだな」

そう言い残してリーダーと呼ばれる男はそこから去り、最悪の事態は幕を閉じた
とりあえず俺は再び唯奈達の家にお邪魔することになった

蓮斗「唯奈、本当ごめんな…」

俺はようやく唯奈に謝ることが出来た
結局色んな事を唯奈に助けられたって感じだ
迷惑をかけるつもりなんて無かったのに…

唯奈「…大丈夫だよ。それに私もごめん…」

陽香「蓮斗君、今は依月よ
佐々木唯奈は世間では死んだ事になってるから
そう呼んであげて」

依月か…なんか呼び慣れないな…

依月「…呼びにくいなら唯奈でもいいよ
だけど人前では絶対に呼ばないで?
蓮斗だけは私の本当の名前覚えておいて…」

蓮斗「…もちろん」

陽香「でも蓮斗君どうするつもりなの?
組織は兎も角、このまま一緒に居れば貴方の命もバンパイアに狙われる事になるのに…」

確かにさっき狙われた
純血である唯奈の血の匂いが俺に移っていたかららしいけど…
だから純血の唯奈や陽香さんと一緒に居るのは危険だと…そうゆうことだよな
それでも…

蓮斗「俺は唯奈と居たいんです
駄目ですか…?」

それでも俺は時間が許す限り唯奈の側に居たい
少しでも支えになりたい
その気持ちは本物だった

陽香「そう…蓮斗君がそうしたいなら私は今更止めないわ」

蓮斗「ありがとうございます陽香さん
それより…さっきのリーダーって人も純血の人なんですか?」

依月「リーダーはリュクに血を吸われた唯一の男の人なの
そして私達純血をまとめるリーダー役
最年長で実力も1番だし面倒見もよくて優しくて決断力もあって皆から慕われてる
だから皆リーダーって呼ぶの
私達もリーダーから組織の事や戦い方、色々教えて貰った」

唯奈の様子からすると本当に慕ってる、尊敬してるって感じだな…
リーダーねぇ…なんか気に食わない…
そう思う俺は心が狭いんだな…

陽香「でもリーダーにバレた時は心臓が止まったわ
どうなるかと思った」

確かに…
陽香さんにバレて銃口向けられた時も俺ははらはらドキドキでしたけど…

依月「私も
でもリーダーは優しい人だから…分かってくれて良かった
ね、蓮斗」

さっきまでと違って安心した笑顔を見せる唯奈
やっぱり今の唯奈にとってあの人は信頼できて頼りになる人なんだろうな…
俺の知らない"依月"としての唯奈が居る
それがなんだか少し嫌だった

ーー…陽香と依月と別れて数分…
まさか少し様子を見に行っただけなのにとんでもない現場に居合わせちまったな…
依月にはあぁ言ったが、俺も非情には慣れなかったってことだな

組織に戻ろうと歩みを進めていると電話が鳴った
電話?組織からか…

リーダー「はい、何か用ですか?」

春千香はるちかっ、大変な事になった!」

春千香は組織に与えられた俺の今の名前だ

リーダー「大変な事ってなんです?」

「確か春千香は今、依月と陽香の所に向かってると言っていたな
なら急いで依月と陽香に合流しろ!」

珍しく慌ててるな…
依月と陽香の名前が出てあいつの存在がバレたのかと思って一瞬ビビったがどうやら違うみたいだ

リーダー「どうゆう事ですか?」

「バンパイアの軍勢が依月と陽香の家に向かっているという情報が入った!」!

リーダー「何ですって!?」

「いくら優秀なあの2人でも軍勢相手では荷が重すぎる!
すぐに応援に向かってくれ!」

リーダー「了解っ、すぐに向かいます」

軍勢って…また位置を特定されたか
とんでもない事になったな
依月と陽香が危ない
それにまだあの男と一緒だろう
確かに2人の実力なら多少のバンパイアの群れなんて敵じゃないだろうが、あの男を庇いながら戦うなんて荷が重過ぎる
依月!陽香!無事でいてくれよ!

ー…リーダーと別れて家に戻って来てからしばらくして突然玄関のドアが激しく叩かれた

依月「誰…?」

陽香「こんな所に人が来るなんてない
それにこんなに激しく叩くなんて普通じゃない
依月準備しな
もしかしたら奴等かもしれない」

確かに様子が少し可笑しい気がする
私達は銃を手に取り、私は蓮斗の側に、そして陽香も銃を持ち警戒しながらドアに近づいていった

蓮斗「唯奈…」

依月「しっ、声を出しちゃ駄目」

陽香「開けるよ」

私はコクンと頷いた
そして緊張感の中、静かにドアが開かれた
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