助けた騎士団になつかれました。

藤 実花

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番外編

魔女はある時突然に……④

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薬草を調べる時、良い効能のあるもの、人体に害を与えるものと、大きく2つに分類している。
そして、害を与えるものを「毒」と認定し、強度をランク分けした書物を作り上げていた。
机の上に積み上げた書物から「毒」と書かれたものを抜き出し、ファリーナに聞いた症状と照らし合わせてみる。
すると、2件、とても似たものが見つかった。

『レンスル花』と『フィードル草』

レンスル花を煎じて服用すれば、腹痛を起こし体温が急激に下がる。
そして、フィードル草は眠りに似た昏睡状態を起こすのだ。
確か、これはサンプルがあったはず。
そう思い出し、自室研究室にファリーナを残して、あたしは離れの薬物保管庫に足を運んだ。

そんなに大きくない男爵邸の建物に対して、外の庭は恐ろしく広大である。
森の部分も庭に含まれるほど広いため、昔はここで狩猟等を楽しんでいたらしい。
その時、狩猟小屋であった古い小屋を、臨時の薬物保管庫として使わせてもらっていた。

「あ、れ?」

着くなりあたしはそう呟いた。
小屋の南京錠が外れている。
ここの鍵はあたしとカーズしか持っていないはず……。
誰かが鍵を壊して侵入したのかと、恐る恐る扉を開けた。
キィ……と、軽く不快な音がして、ゆっくりと中に踏み込む。
棚を確かめ、引出しも確める。
特に変わった所はないし、荒らされてもいない。
少しほっとして、奥の毒物サンプル保管棚に目をやった時、あたしの心臓は跳ね上がった。

強度毎に分けた毒物サンプルの内、最強に分類されるものが……そこにはなかったのだ。

「うそ……誰が……」

レンスル花、フィードル草、タマナ蔓に、ベラドナの茎……。
それを煎じて小瓶に入れたものが軒並み失くなっている。

南京錠が無理やり壊されたような形跡はなかった……。
ならば、これは鍵を持っている者の仕業としか考えられない。
……カーズ……。
あの男が持っていったんだ……。
でも、どうして!?

あたしはすぐに馬屋へ向かった。
そこで、黒く若い牡馬を厩舎から出し鞍を取り付けると、急いである場所へ駆けた。



「カーズ!カーズ・レインっ!!」

馬上から大声で叫ぶと、栗色の髪の華奢な男が振り向いた。
教会の建築図を手に関係者と歓談していた男は、声のした方を見ると、物凄く嫌そうな顔をした。

「アリエル?なんでまたこんなところに?」

あたしは馬から降り、カーズに掴み掛かった。

「保管庫の毒をどうしたの!?」

「毒?……保管庫の……ああ!」

そこでにっこり微笑んだカーズは、手で軽く人払いをし、仮設の小屋にあたしを招いた。

「で!?毒は!?どこかに移したの!?」

「……いいや」

「じゃあどこ!?」

「……うん。まぁ、それなんだが……ある方がな、強力な毒をご所望なんだ。それで、小屋の毒が使えるかなと思って……」

「使えるかなと……思って……?」

にこやかに笑うカーズと対照的に、あたしは青ざめた。
まさか、この男……あの毒を村人で試したのでは!?

「そう。お前も自分で試していたじゃないか?オレは苦しいのは嫌だから、作業に来た村人を使わせてもらったよ。配給の食事に混ぜてな。ただ、効果は良くわからん……死んでないようだし……あれでは売れないかもしれんな。もっと強力な毒を作ってくれないか?コロッと死ぬやつ。そうでないと、金が貰えないんだよ」

「……あ……」

……言葉が出ない。
この男は一体何を言っているんだろう。
毒だとわかっていて、死ぬかもしれないのに、それを他人で試す……?
そして、それに飽きたらず、もっと強力なものを作れと……?
しかも---金の為に。

体の芯が燃えるように熱い。
でも、反対に頭は凍えたように冷静だった。
やるべきことの順番を間違えないように、あたしは咄嗟にカーズに笑いかけた。

「ええ。とっても効く、最高の毒を作ってみるわ」

























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