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王都
152.出会ってくれてありがとう
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嵐の去った王宮は、驚くほど静かになった。
だけど、その後すぐに騎士団やナシリス軍が「待っていました!」とばかりに雄叫びを上げ、大歓声に包まれた。
勝ち名乗り?というやつよね?
本来なら変態王を倒したところで起こるはずのものが、お騒がせな身内のせいで延び延びになってしまったことを、私は平謝りしたい……。ごめん。
ディランは騎士団にとり囲まれて、祝いの言葉を浴びせられ、まんざらでもない顔をしている。
その横でクレバードの肩に担がれた私は、夜食の焼菓子を渡され、それをもぐもぐしながら微笑んで手を振った。
「シルベーヌさまぁーー!」
「うぉーっ!我らが女神ー!シルベーヌ様!」
それを見た騎士団から、轟く咆哮が沸き上がる!
ここ、響くからね……夜中だしやめとこ?
「ははは!我らが女神、シルベーヌ様か。本当にその通りだな」
騎士団に揉まれながら、ディランが私の元にやって来た。
クレバードは恭しく跪き、そっと私を下ろすとディランへと誘う。
ディラン・ヴァーミリオンはもう騎士団長じゃない。
一国の王だ。
クレバードに倣い、騎士団は全員スッとディランに向かって跪いた。
そして、ローケン、ルイ、アリエル、フロール王女や他国の姫君も順に膝を折った。
「皆、ご苦労。ここに、アスガルド・ラシュカの系譜は絶たれ、不遇の時は終わりをつげた。これからは、君主としてこのような過ちがおきないよう努力するつもりだ」
ディランの声は広場に良く響き、その伸びやかさに私は息を飲んだ。
思わず焼菓子を頬張るのを止めたほどよ。
「しかし、これは一人の力では到底成し得なかったことだ。騎士団や、サクリス殿下、それにローケン、他にも様々な人に助けられた」
一呼吸置き、更に続ける。
「中でも我らの一番の原動力となったのは、やはりシルベーヌ様だろう」
ディランは私を覗き込み、真面目な顔で言った。
「ムーンバレーで君に出会わなければ、この国は変わらなかった。誰も救われなかったんだ」
「ディラン……」
「だから、俺は……君に誓う。王としてこの国を治めることはもちろんだが、王である前にシルベーヌ様、俺は君の騎士であると。いつか君が永遠に眠る時が来ても、その亡骸の側で俺は君を守り続けるよ」
私の手を取りそっと口付けるディランは、柔らかい笑みを溢しながらも、真摯な瞳で熱く語った。
そう言えば、お父様が言ってたっけ。
偶然はいくつもあるけど、それが重なり続ける時……それは、大いなる運命が抗えない流れで動き出しているのだと。
あの時は良くわからなかったけど、今ならその意味がわかる気がする。
ムーンバレーで彼らと……ディランと出会ったことが偶然なら、それから起こった全ての偶然や出会いはきっと運命。
大きな運命の奔流は、私とディランが出会った瞬間、もう流れ始めていたのよ。
「ふふっ。ディラン!みんな!出会ってくれてありがとう!」
私はこちらを見つめ続ける彼らに、心からの言葉を振り絞った。
長い長い夜の向こうに、明星が輝き始める。
その明星の下で一際輝く銀の一等星と、それを取り巻く星達は澄んだ闇の空気の中で、溢れる笑顔を振り撒いた。
だけど、その後すぐに騎士団やナシリス軍が「待っていました!」とばかりに雄叫びを上げ、大歓声に包まれた。
勝ち名乗り?というやつよね?
本来なら変態王を倒したところで起こるはずのものが、お騒がせな身内のせいで延び延びになってしまったことを、私は平謝りしたい……。ごめん。
ディランは騎士団にとり囲まれて、祝いの言葉を浴びせられ、まんざらでもない顔をしている。
その横でクレバードの肩に担がれた私は、夜食の焼菓子を渡され、それをもぐもぐしながら微笑んで手を振った。
「シルベーヌさまぁーー!」
「うぉーっ!我らが女神ー!シルベーヌ様!」
それを見た騎士団から、轟く咆哮が沸き上がる!
ここ、響くからね……夜中だしやめとこ?
「ははは!我らが女神、シルベーヌ様か。本当にその通りだな」
騎士団に揉まれながら、ディランが私の元にやって来た。
クレバードは恭しく跪き、そっと私を下ろすとディランへと誘う。
ディラン・ヴァーミリオンはもう騎士団長じゃない。
一国の王だ。
クレバードに倣い、騎士団は全員スッとディランに向かって跪いた。
そして、ローケン、ルイ、アリエル、フロール王女や他国の姫君も順に膝を折った。
「皆、ご苦労。ここに、アスガルド・ラシュカの系譜は絶たれ、不遇の時は終わりをつげた。これからは、君主としてこのような過ちがおきないよう努力するつもりだ」
ディランの声は広場に良く響き、その伸びやかさに私は息を飲んだ。
思わず焼菓子を頬張るのを止めたほどよ。
「しかし、これは一人の力では到底成し得なかったことだ。騎士団や、サクリス殿下、それにローケン、他にも様々な人に助けられた」
一呼吸置き、更に続ける。
「中でも我らの一番の原動力となったのは、やはりシルベーヌ様だろう」
ディランは私を覗き込み、真面目な顔で言った。
「ムーンバレーで君に出会わなければ、この国は変わらなかった。誰も救われなかったんだ」
「ディラン……」
「だから、俺は……君に誓う。王としてこの国を治めることはもちろんだが、王である前にシルベーヌ様、俺は君の騎士であると。いつか君が永遠に眠る時が来ても、その亡骸の側で俺は君を守り続けるよ」
私の手を取りそっと口付けるディランは、柔らかい笑みを溢しながらも、真摯な瞳で熱く語った。
そう言えば、お父様が言ってたっけ。
偶然はいくつもあるけど、それが重なり続ける時……それは、大いなる運命が抗えない流れで動き出しているのだと。
あの時は良くわからなかったけど、今ならその意味がわかる気がする。
ムーンバレーで彼らと……ディランと出会ったことが偶然なら、それから起こった全ての偶然や出会いはきっと運命。
大きな運命の奔流は、私とディランが出会った瞬間、もう流れ始めていたのよ。
「ふふっ。ディラン!みんな!出会ってくれてありがとう!」
私はこちらを見つめ続ける彼らに、心からの言葉を振り絞った。
長い長い夜の向こうに、明星が輝き始める。
その明星の下で一際輝く銀の一等星と、それを取り巻く星達は澄んだ闇の空気の中で、溢れる笑顔を振り撒いた。
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