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王都
148.大事なのは
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「今の声は誰?シルベーヌちゃん、側に男がいるの?」
ディランの声に母が反応した。
「はい。彼はラシュカ王で私の結婚相手の方です。あっ!変態の方ではなくて、あの、新しく即位した方です……」
「変態の方ではない」って、なんかすごく変な説明よね?
それに、そう区別はしたけど、果たしてディランは変態じゃない!っていいきれるのかしら?悩むわね。
「初めまして!冥府の王妃ルヴェール様。シルベーヌ様の夫、ディラン・ヴァーミリオンです!シルベーヌ様を必ず幸せにしますのでどうかご安心を!」
そして、変態の方ではない男はまたもや先走った。
「夫………」
「おっと?」
「お、夫……て、気が早いな」
母、私、父はディランの中でぐんぐん膨らむ妄想に唖然とした。
特に母は、突然の夫宣言に黙りこんでしまった。
「お、お母様?」
「………………………」
「ん?どうしたんだ?俺何か変なこと言ったかな?」
ディラン、黙ってて!
と、私は目で彼に合図をし、そして、ふんわりと母に説明を開始した。
「お母様。実は、私とディランは地上で出会い、いろいろあって……こうなりました」
『ふんわりしすぎだろーがぁ!!』
と黒スピー。
「え?そんなザックリした説明ありますか?」
と、ローケン。
「ふはははっ!大雑把だな!全然わからねぇ!」
と、サクリスが叫んだ。
私のふんわりとした説明に、背後から失笑やため息が漏れた。
何よ!時間を短縮しようと思ったんじゃない!
まぁ、確かに?短縮し過ぎた感は否めないわね。
「…………………………」
母はまだだんまりを決め込んでいる。
や、やっぱりもう一度、ちゃんと説明をした方がいいかしら?
そう思ったとき、ディランが口を開いた。
「突然のことでさぞ驚かれたことでしょう。ですが、俺とシルベーヌ様が出会うことは運命だったのだと思います。彼女は俺の人生を変えました。それはもう、天と地がひっくり返るくらいの衝撃です。彼女と出逢わない人生なんて考えられない、そんな人生はきっと死んでいるのと同じだからです。ですから、ルヴェール様、この結婚を認めて頂きたい……シルベーヌ様を心から愛しているんです」
淀みなく言い切った言葉には、いつもの狂気さは微塵も感じられなかった。
冷静に情熱を押し留めながら吐き出される言葉の一つ一つに、ありったけの思いを込めている。
私は泣きそうになってディランを見上げた。
そうよね、出会ってからの経緯なんてどうでもいいわ。
大事なのは、どれだけの想いがあるか……それだけよね。
「お母様……私もディランを、あ、愛しています。ここにいて、彼と共に過ごしたいです。お願いします……」
「愛しています」なんて初めて言うから、声が上擦って変な感じになったけど、心からのこの気持ちにどうか母が気付いてくれますように。
そう願いながら、母の返事を待った。
ディランの声に母が反応した。
「はい。彼はラシュカ王で私の結婚相手の方です。あっ!変態の方ではなくて、あの、新しく即位した方です……」
「変態の方ではない」って、なんかすごく変な説明よね?
それに、そう区別はしたけど、果たしてディランは変態じゃない!っていいきれるのかしら?悩むわね。
「初めまして!冥府の王妃ルヴェール様。シルベーヌ様の夫、ディラン・ヴァーミリオンです!シルベーヌ様を必ず幸せにしますのでどうかご安心を!」
そして、変態の方ではない男はまたもや先走った。
「夫………」
「おっと?」
「お、夫……て、気が早いな」
母、私、父はディランの中でぐんぐん膨らむ妄想に唖然とした。
特に母は、突然の夫宣言に黙りこんでしまった。
「お、お母様?」
「………………………」
「ん?どうしたんだ?俺何か変なこと言ったかな?」
ディラン、黙ってて!
と、私は目で彼に合図をし、そして、ふんわりと母に説明を開始した。
「お母様。実は、私とディランは地上で出会い、いろいろあって……こうなりました」
『ふんわりしすぎだろーがぁ!!』
と黒スピー。
「え?そんなザックリした説明ありますか?」
と、ローケン。
「ふはははっ!大雑把だな!全然わからねぇ!」
と、サクリスが叫んだ。
私のふんわりとした説明に、背後から失笑やため息が漏れた。
何よ!時間を短縮しようと思ったんじゃない!
まぁ、確かに?短縮し過ぎた感は否めないわね。
「…………………………」
母はまだだんまりを決め込んでいる。
や、やっぱりもう一度、ちゃんと説明をした方がいいかしら?
そう思ったとき、ディランが口を開いた。
「突然のことでさぞ驚かれたことでしょう。ですが、俺とシルベーヌ様が出会うことは運命だったのだと思います。彼女は俺の人生を変えました。それはもう、天と地がひっくり返るくらいの衝撃です。彼女と出逢わない人生なんて考えられない、そんな人生はきっと死んでいるのと同じだからです。ですから、ルヴェール様、この結婚を認めて頂きたい……シルベーヌ様を心から愛しているんです」
淀みなく言い切った言葉には、いつもの狂気さは微塵も感じられなかった。
冷静に情熱を押し留めながら吐き出される言葉の一つ一つに、ありったけの思いを込めている。
私は泣きそうになってディランを見上げた。
そうよね、出会ってからの経緯なんてどうでもいいわ。
大事なのは、どれだけの想いがあるか……それだけよね。
「お母様……私もディランを、あ、愛しています。ここにいて、彼と共に過ごしたいです。お願いします……」
「愛しています」なんて初めて言うから、声が上擦って変な感じになったけど、心からのこの気持ちにどうか母が気付いてくれますように。
そう願いながら、母の返事を待った。
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