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王都
142.最終兵器、私。
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でもそれがわかったところでどうにもならない。
今すぐ各領主に同意を取り付けるなんて無理だし、父はそれを待ってくれるほどお人好しではない。
『お嬢、諦めるのが早くねぇか?』
私の心を読んで、黒スピーが呟いた。
そんなこと言われても、どうしようもないじゃない?
『もう少し粘ってみろや。そうさな、あと5分くらいか』
5分?やけに具体的ね?
『オイ、やるのかやらねーのか?どっちかに決めろい!』
ううっ!
や、やるわよ!
5分ね、5分………ええと、どうする?
はっ!そうだわ!
私は思い付きで父に言った。
「お父様、私、歌いたいと思いますっ!」
『うげぇ!?』
その言葉を聞いて黒スピーは変な声を出したけど、もちろん私以外には聞こえていない。
「……今、ここでか?」
父は首を傾げ、怪訝そうな顔をした。
「はいっ!滅び行く地上の為に、鎮魂歌等を……」
「ふむ。お前が歌を……な。そう言えば、初めてではないか?冥府では家族の前で歌ったことはなかったような……よかろう。お前の切ない気持ちもわかる。存分に歌うがよい」
「ありがとうございます!!」
私はディランの隣から一歩前に出て、指を前で組んだ。
んんっ、と軽く咳払いを一つ。
そして、星が瞬く天を仰ぎ、深く大きく息を吸い込んだ。
『やべーぞ!野郎どもっ!死にたくなかったら耳を塞げーー!!』
黒スピーは、騎士団、ナシリス軍、王女達だけに聞こえる周波数で叫ぶ。
一瞬躊躇した皆は、それでも黒スピーの指示に従い咄嗟に耳を塞いだ。
息を吸い込んだ私は、遥か昔、冥府での出来事を思い出していた。
あれは……そう、まだ妹が小さい頃の話。
癇癪を起こして、泣き止まなくなったからあやそうと歌を歌ってあげたら、途端に妹が引き付けを起こしたのよね……。
その時はたまたまかな、と思ったんだけど、それから歌うと物が割れたり、モヤシが腐ったり。
このことを只事ではないと判断したスピークルムが、歌禁止命令を出し、以降歌うことを止めたんだったわ。
結局、私の歌が引き起こす謎の症状の原因はわからなかったけど、今ここで、時間が稼げるならそれも喜ぶべきことなのかもしれない!
それでは、遠慮することなく最大音量でお届けします!
シルベーヌが歌う「この美しき世界の真ん中で」!
「わーたしぃーはー、こーのー、うつくーしぃーぃーぃー、せぇーかぁいーのぉー、まんなぁーかぁーでぇーぇー」
夜の闇に、私の声はどこまでも響き渡った。
澄みきった空気は、より遠くまで声を届かせ、王宮の建物の構造がさらに声を反響させる。
天然のエコーがかかって、だんだんと気持ち良くなり、私は調子に乗ってビブラートまで聞かせて歌った。
「ぐうぉぉぉぉぉーー…………こっ、これは………」
至近距離で歌を聞いた父は、耳を押さえガクンと膝をつき、後ろにいた軍勢も、ブルブルと体を振るわせ悶えながらのたうちまわる。
しかし、高揚感に支配された私は観客の異常事態には目もくれず、心のままに叫び倒した。
「だぁってーー、わたぁーしぃーーがー、いちばーぁんーー、すきぃーなのぉはぁーー」
『お嬢!!お嬢!もう5分たったぞ!止めてくれ!!お嬢の歌で先に地上が滅ぶぞ!?』
突然、黒スピーが慌てて止めた。
ん?どうしてよー?
やっと気分が乗ってきたところだったのにー!
『見てみろ!全員倒れてるじゃねぇか!』
私の歌の素晴らしさにひれ伏したの?
『アホか!?お嬢はな……音痴なんだよ!!』
………はい?
『はぁー……今までオレ、気を使ってたからなぁ。言わないでやってたんだぜ?ハッキリ言って、お嬢は音痴、お・ん・ち!しかも、妙な周波数が出てやがる。とんだ最終兵器だぜ』
嘘でしょ?私、音痴なの?
慌てて歌を止め、冷静に辺りを見回すと、冥府の軍勢は皆辺りに突っ伏し、父は頭を押さえ、サクリスやナシリス軍、王女達は耳を塞いで蹲る。
その中で、騎士団死人組だけは、微笑みを湛えパチパチと拍手を送っていた。
『あれ(死人組)は、別格だからな。狂信的な愛情であらゆる精神攻撃を防いでるんだ』
黒スピーは呆れて言った。
今すぐ各領主に同意を取り付けるなんて無理だし、父はそれを待ってくれるほどお人好しではない。
『お嬢、諦めるのが早くねぇか?』
私の心を読んで、黒スピーが呟いた。
そんなこと言われても、どうしようもないじゃない?
『もう少し粘ってみろや。そうさな、あと5分くらいか』
5分?やけに具体的ね?
『オイ、やるのかやらねーのか?どっちかに決めろい!』
ううっ!
や、やるわよ!
5分ね、5分………ええと、どうする?
はっ!そうだわ!
私は思い付きで父に言った。
「お父様、私、歌いたいと思いますっ!」
『うげぇ!?』
その言葉を聞いて黒スピーは変な声を出したけど、もちろん私以外には聞こえていない。
「……今、ここでか?」
父は首を傾げ、怪訝そうな顔をした。
「はいっ!滅び行く地上の為に、鎮魂歌等を……」
「ふむ。お前が歌を……な。そう言えば、初めてではないか?冥府では家族の前で歌ったことはなかったような……よかろう。お前の切ない気持ちもわかる。存分に歌うがよい」
「ありがとうございます!!」
私はディランの隣から一歩前に出て、指を前で組んだ。
んんっ、と軽く咳払いを一つ。
そして、星が瞬く天を仰ぎ、深く大きく息を吸い込んだ。
『やべーぞ!野郎どもっ!死にたくなかったら耳を塞げーー!!』
黒スピーは、騎士団、ナシリス軍、王女達だけに聞こえる周波数で叫ぶ。
一瞬躊躇した皆は、それでも黒スピーの指示に従い咄嗟に耳を塞いだ。
息を吸い込んだ私は、遥か昔、冥府での出来事を思い出していた。
あれは……そう、まだ妹が小さい頃の話。
癇癪を起こして、泣き止まなくなったからあやそうと歌を歌ってあげたら、途端に妹が引き付けを起こしたのよね……。
その時はたまたまかな、と思ったんだけど、それから歌うと物が割れたり、モヤシが腐ったり。
このことを只事ではないと判断したスピークルムが、歌禁止命令を出し、以降歌うことを止めたんだったわ。
結局、私の歌が引き起こす謎の症状の原因はわからなかったけど、今ここで、時間が稼げるならそれも喜ぶべきことなのかもしれない!
それでは、遠慮することなく最大音量でお届けします!
シルベーヌが歌う「この美しき世界の真ん中で」!
「わーたしぃーはー、こーのー、うつくーしぃーぃーぃー、せぇーかぁいーのぉー、まんなぁーかぁーでぇーぇー」
夜の闇に、私の声はどこまでも響き渡った。
澄みきった空気は、より遠くまで声を届かせ、王宮の建物の構造がさらに声を反響させる。
天然のエコーがかかって、だんだんと気持ち良くなり、私は調子に乗ってビブラートまで聞かせて歌った。
「ぐうぉぉぉぉぉーー…………こっ、これは………」
至近距離で歌を聞いた父は、耳を押さえガクンと膝をつき、後ろにいた軍勢も、ブルブルと体を振るわせ悶えながらのたうちまわる。
しかし、高揚感に支配された私は観客の異常事態には目もくれず、心のままに叫び倒した。
「だぁってーー、わたぁーしぃーーがー、いちばーぁんーー、すきぃーなのぉはぁーー」
『お嬢!!お嬢!もう5分たったぞ!止めてくれ!!お嬢の歌で先に地上が滅ぶぞ!?』
突然、黒スピーが慌てて止めた。
ん?どうしてよー?
やっと気分が乗ってきたところだったのにー!
『見てみろ!全員倒れてるじゃねぇか!』
私の歌の素晴らしさにひれ伏したの?
『アホか!?お嬢はな……音痴なんだよ!!』
………はい?
『はぁー……今までオレ、気を使ってたからなぁ。言わないでやってたんだぜ?ハッキリ言って、お嬢は音痴、お・ん・ち!しかも、妙な周波数が出てやがる。とんだ最終兵器だぜ』
嘘でしょ?私、音痴なの?
慌てて歌を止め、冷静に辺りを見回すと、冥府の軍勢は皆辺りに突っ伏し、父は頭を押さえ、サクリスやナシリス軍、王女達は耳を塞いで蹲る。
その中で、騎士団死人組だけは、微笑みを湛えパチパチと拍手を送っていた。
『あれ(死人組)は、別格だからな。狂信的な愛情であらゆる精神攻撃を防いでるんだ』
黒スピーは呆れて言った。
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