助けた騎士団になつかれました。

藤 実花

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王都

138.地上を守る盾

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「それは出来ません」

私は、キッと父を睨んだ。
生まれてこの方、父を睨んだことなんてない。
ぼーっとしていて、ことなかれ主義の私が両親と衝突することなんて一度もなかったからだ。
そんな私の人生初の反抗に、父は愕然とした。

「ど、ど、ど、どうした!?シルベーヌ?反抗期か?遅れてやってきた反抗期なのか!?」

アワアワと面白いくらい慌てる父。
それを目の前で見て、ディランも慌てて言った。

「シルベーヌ様。もうこうなったらこちらにいては危ない。君を危険な目に会わせることだけは出来ない……それは、この地上が滅んでもだ」

彼の思いを聞いて、私は頷いた。
でもそれは、納得したわけじゃない。
「私に任せて!」そういうつもりで頷いたのよ!

「お父様。私はこの地上へ、ラシュカ国王の妃になるためにやって来ました。約束はこうでしたよね?《ラシュカ王が私と結婚しなければ命を奪い、それを合図に地上を侵攻する》と」

「そうだ。だからこうして……」

「別人です」

「は?」

父は目と口をだらしなく開けた。

「べ、別人?それはどういうことだ?」

私は大きく息を吸った。
ここからが正念場よ!

「さっき死んだのはラシュカの王ではなく別人。あ、正確に言うと、王であったけどもう王ではないということです」

「……苦し紛れに何を言う。あやつ、ザビルが王であったことは冥鏡の名簿にも記されておる」

「事態は刻々と変わるもの。ほんの一時の間に、王は代替わりをしていたのですっ!」

私は声を張る。
負けられない戦いがここにあるからよ!

「ふん………聞いてやろう。お前のその奇策をな」

不敵に笑う父を前にして、私はディランの腕の中から地面に降りた。
守られているだけじゃない!
今度は私が皆を守ってあげる!
そんな思いで叫び倒した。

「これを見て下さい!」

ドレスのポケットから、あるものを取り出し天に掲げる。
ガストが命懸けで守ったもの、それは、今地上を守る唯一の盾になる。

「王の王足る証。レガリアです!これは……彼のもの……」

私は、ディランの手を取り、指にそれを嵌めた。
きっと驚いているだろう彼の顔を見ることは出来ない。
恥ずかしさもあり、照れもあり……。
これから言わなければいけないとても大事なこと、それを考えると、真っ赤になっている顔を見せることは出来なかった。





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