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王都
147.冥府の王妃様
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不快な音の後には、暫しの静寂が続いた。
その静寂は無駄に不安を煽って、スピークラムの向こうのハーミットに何か良からぬが起こったのだと、皆心配した。
中でも、父の顔は真っ青で、尋常じゃないことが起こっているのはもう間違いなさそう……。
「あーーなーーたぁーーー?」
スピークラムから響く声、それは、澄んで美しい声だったけど、震えるくらい怒気を含んでいる。
父は恐怖でブルルと体を震わせ、私はまた面倒な人が加わったなと溜め息をついた。
「あ、お……ルヴェール……さん?」
「ええ!ルヴェールさんですがっ!?」
ビクつく父に、冥府の王妃ルヴェールは畳み掛けるように怒鳴った。
「ど、どうした?今は旅行中だろう?ん?」
「…………そうね。プレゲトン川クルーズの真っ最中だったわ!でも、たまたまハーミットに連絡を取ったら、シルベーヌちゃんが地上へお嫁に行ったって言うじゃない!?そして、更に!冥府の軍勢を動かして地上に侵攻したって!?一体どういうことかしら?」
「えーっと。それには深いわけが……」
「深いわけがあろうとなかろうと!!わたくしに相談もせずに娘を嫁がせるなんてどういうおつもり!?」
母の怒りは右肩上がりで最高点に到達しようとしている。
ていうか、母に了承をとってなかったことがビックリなんですけど!?
確かに、トントン拍子に話が進んで行くから怪しいとは思っていたわ。
でも、私も地上に行きたいって思ってたからあまり深く考えなかったし。
考え込む私の前では、夫婦ゲンカが続いている。
「それは……黙っていたことは……すまないと思って……」
「すまない!?すまないですって!はっ!聞けば、シルベーヌちゃんが嫁がされた男ってとんだ変態なんでしょう?あなたそれを知っていて嫁がせたわね?……いい加減にしないと、離縁して冥府から追い出すわよ?」
「待ってくれ!ルヴェール、頼む一度冷静に話を聞いて欲しい!シルベーヌ、お前からも何か言ってくれ!」
えー?巻き込まれたくないんですけど?
思いっきりイヤそうな顔をした私を見て、父は指を組んで嘆願する。
「シルベーヌちゃん?あら?そこにシルベーヌちゃんいるの?」
………お父様のバカ、見つかってしまったじゃないの。
途端に朗らかな声を出した母に、私は仕方なく挨拶をした。
「お母様、お久しぶりです」
「ほんと!久しぶりね!あなたにたくさんお土産を買ったのよ!結婚なんてやめて今すぐ冥府に帰ってらっしゃいな」
「あの、それは出来ません」
「出来ないって……なぁに?……はっ!ま、まさか……」
母の声色が突然変わり、スピークラムがガタガタと震え始める。
「お、お母様?」
「シルベーヌちゃん、既に変態に手篭めにされ……」
「違います!全然違いますぅー!全く何にもされてませんしー!」
何てことを言い出すのよぉ……。
必死で否定してしまったじゃない!
と思った途端、隣から絞り出すような声が聞こえてきた。
「ああっ!神よ!感謝します!俺のシルベーヌ様は無垢だ……」
ディランは胸の前で拳を握り、幸せを噛み締めるように祈りを捧げている。
ああ、うん……そうそう、無垢ですよ。
たぶん、これから一生無垢でしょうね。
あ、イヤミじゃないのよ?
……そこのところはちゃんとわかってるのかしらねぇ。
その静寂は無駄に不安を煽って、スピークラムの向こうのハーミットに何か良からぬが起こったのだと、皆心配した。
中でも、父の顔は真っ青で、尋常じゃないことが起こっているのはもう間違いなさそう……。
「あーーなーーたぁーーー?」
スピークラムから響く声、それは、澄んで美しい声だったけど、震えるくらい怒気を含んでいる。
父は恐怖でブルルと体を震わせ、私はまた面倒な人が加わったなと溜め息をついた。
「あ、お……ルヴェール……さん?」
「ええ!ルヴェールさんですがっ!?」
ビクつく父に、冥府の王妃ルヴェールは畳み掛けるように怒鳴った。
「ど、どうした?今は旅行中だろう?ん?」
「…………そうね。プレゲトン川クルーズの真っ最中だったわ!でも、たまたまハーミットに連絡を取ったら、シルベーヌちゃんが地上へお嫁に行ったって言うじゃない!?そして、更に!冥府の軍勢を動かして地上に侵攻したって!?一体どういうことかしら?」
「えーっと。それには深いわけが……」
「深いわけがあろうとなかろうと!!わたくしに相談もせずに娘を嫁がせるなんてどういうおつもり!?」
母の怒りは右肩上がりで最高点に到達しようとしている。
ていうか、母に了承をとってなかったことがビックリなんですけど!?
確かに、トントン拍子に話が進んで行くから怪しいとは思っていたわ。
でも、私も地上に行きたいって思ってたからあまり深く考えなかったし。
考え込む私の前では、夫婦ゲンカが続いている。
「それは……黙っていたことは……すまないと思って……」
「すまない!?すまないですって!はっ!聞けば、シルベーヌちゃんが嫁がされた男ってとんだ変態なんでしょう?あなたそれを知っていて嫁がせたわね?……いい加減にしないと、離縁して冥府から追い出すわよ?」
「待ってくれ!ルヴェール、頼む一度冷静に話を聞いて欲しい!シルベーヌ、お前からも何か言ってくれ!」
えー?巻き込まれたくないんですけど?
思いっきりイヤそうな顔をした私を見て、父は指を組んで嘆願する。
「シルベーヌちゃん?あら?そこにシルベーヌちゃんいるの?」
………お父様のバカ、見つかってしまったじゃないの。
途端に朗らかな声を出した母に、私は仕方なく挨拶をした。
「お母様、お久しぶりです」
「ほんと!久しぶりね!あなたにたくさんお土産を買ったのよ!結婚なんてやめて今すぐ冥府に帰ってらっしゃいな」
「あの、それは出来ません」
「出来ないって……なぁに?……はっ!ま、まさか……」
母の声色が突然変わり、スピークラムがガタガタと震え始める。
「お、お母様?」
「シルベーヌちゃん、既に変態に手篭めにされ……」
「違います!全然違いますぅー!全く何にもされてませんしー!」
何てことを言い出すのよぉ……。
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「ああっ!神よ!感謝します!俺のシルベーヌ様は無垢だ……」
ディランは胸の前で拳を握り、幸せを噛み締めるように祈りを捧げている。
ああ、うん……そうそう、無垢ですよ。
たぶん、これから一生無垢でしょうね。
あ、イヤミじゃないのよ?
……そこのところはちゃんとわかってるのかしらねぇ。
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