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王都
109.変態王と宵闇の女神
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ローケンの声の後、ギギという不快な音をたてて、黒い扉が開いた。
広い謁見の間。
私は赤い絨毯を踏みしめ、玉座までの長い道を一歩一歩進んだ。
目の端に、チラリと私兵の姿が見え、ヒューという口笛が聞こえる。
謁見の間にも……私兵?
私が来たときには衛兵だったような?
不安気な顔をした私の目に、こんどはローケンが映った。
彼は少し後ろを付いてきている。
それが確認出来てほっとすると同時に、ギギと閉まる扉の音が一瞬身震いをさせた。
なんだか、地獄の門が閉まる音のよう……と思ってしまう。
ちょうど謁見の間の中央に来たところで、玉座の王を視認すると、漸く忘れていたその顔を思い出した。
あ、そうそう、金髪だったわね。
キラキラしてると思ったけど、ディランの方がもっと眩しいくらい煌めいているわね。
それに、ディランの方が顔もカッコいいしー………。
………何と比べているのかしら、私。
それどころじゃないでしょう!
気合いを入れ直し、真っ直ぐ前を向き歩き続けた。
最初に謁見したときと違って、フードは被ってない。
王からも、私を確認出来るはずだ。
負けないように、と、睨み付けるように王を見た。
………………あら?
ん?王って、こんなにだらしない顔をしていたかしら?
それに、怖いくらい前のめりよ!?
何なの、変な病気じゃないでしょうね?
私は少し歩くスピードを緩めた。
怖かったからよ!
でも、そんな気持ちをローケンはわかってくれなかった。
「シルベーヌ様??普通に歩いて下さい」
「えー……だって、ローケン。あれ見てよ、怖いわ」
私達は器用に前を向いたまま会話した。
もちろん、顔は常に笑顔で、よ!
「わかってます!気持ち悪いのもわかってます!ですが………あ!」
「あ!」
ローケンと私の「あ!」は同時だった。
なんと、痺れを切らした王が、玉座を立ち上がりこっちに向かって来ているっ!
必死の形相で、何か、驚きの表情で……。
そうね、例えるなら、新種の虫でも見つけたような顔??
『相変わらずクソみたいな例えデスね』
失礼なスピークルムに言い返す間もなく、王に距離を詰められてしまった。
「ああ、本当であったな。ガストの申すことが嘘ではないかと疑ってはいたが……宵闇の女神、確かに貴女はそう言われるに相応しい」
変態王は頬を上気させ早口で言った。
「あ……………お……………う?」
私はと言えば、あんなに練習した文言を、予想外の王の行動によって綺麗に忘れ去ってしまっている。
「どうした?ああ、そうか。わかっている」
え、何が?
「私は最初に貴女に会った時、とても失礼なことを言ったな。許せ。しかし、最初からこの姿になっていれば暴言を吐かなかったものを」
この人、私のこと変身機能付きの何かだと思ってない?
その心の呟きに、スピークルムが『ムフッ』と笑った。
「……ザビル陛下。シルベーヌ様は嬉しさのあまり声が出ない様子にございまして」
ローケンが助け船?を出した。
「そうか!そうだろうな!ああ、謁見など、ものものしいのは止めにしよう。私の部屋でゆっくり話そうではないか!」
いきなりマイルーム!?
なんか色々飛び越えたよね?
初対面にも等しい間柄で、しかもっ!!
会って早々「醜女」って言ったくせにこの距離の詰め方!!
ある意味天才的(図々しい)………。
その才能、別のことに使えばいいのに!
広い謁見の間。
私は赤い絨毯を踏みしめ、玉座までの長い道を一歩一歩進んだ。
目の端に、チラリと私兵の姿が見え、ヒューという口笛が聞こえる。
謁見の間にも……私兵?
私が来たときには衛兵だったような?
不安気な顔をした私の目に、こんどはローケンが映った。
彼は少し後ろを付いてきている。
それが確認出来てほっとすると同時に、ギギと閉まる扉の音が一瞬身震いをさせた。
なんだか、地獄の門が閉まる音のよう……と思ってしまう。
ちょうど謁見の間の中央に来たところで、玉座の王を視認すると、漸く忘れていたその顔を思い出した。
あ、そうそう、金髪だったわね。
キラキラしてると思ったけど、ディランの方がもっと眩しいくらい煌めいているわね。
それに、ディランの方が顔もカッコいいしー………。
………何と比べているのかしら、私。
それどころじゃないでしょう!
気合いを入れ直し、真っ直ぐ前を向き歩き続けた。
最初に謁見したときと違って、フードは被ってない。
王からも、私を確認出来るはずだ。
負けないように、と、睨み付けるように王を見た。
………………あら?
ん?王って、こんなにだらしない顔をしていたかしら?
それに、怖いくらい前のめりよ!?
何なの、変な病気じゃないでしょうね?
私は少し歩くスピードを緩めた。
怖かったからよ!
でも、そんな気持ちをローケンはわかってくれなかった。
「シルベーヌ様??普通に歩いて下さい」
「えー……だって、ローケン。あれ見てよ、怖いわ」
私達は器用に前を向いたまま会話した。
もちろん、顔は常に笑顔で、よ!
「わかってます!気持ち悪いのもわかってます!ですが………あ!」
「あ!」
ローケンと私の「あ!」は同時だった。
なんと、痺れを切らした王が、玉座を立ち上がりこっちに向かって来ているっ!
必死の形相で、何か、驚きの表情で……。
そうね、例えるなら、新種の虫でも見つけたような顔??
『相変わらずクソみたいな例えデスね』
失礼なスピークルムに言い返す間もなく、王に距離を詰められてしまった。
「ああ、本当であったな。ガストの申すことが嘘ではないかと疑ってはいたが……宵闇の女神、確かに貴女はそう言われるに相応しい」
変態王は頬を上気させ早口で言った。
「あ……………お……………う?」
私はと言えば、あんなに練習した文言を、予想外の王の行動によって綺麗に忘れ去ってしまっている。
「どうした?ああ、そうか。わかっている」
え、何が?
「私は最初に貴女に会った時、とても失礼なことを言ったな。許せ。しかし、最初からこの姿になっていれば暴言を吐かなかったものを」
この人、私のこと変身機能付きの何かだと思ってない?
その心の呟きに、スピークルムが『ムフッ』と笑った。
「……ザビル陛下。シルベーヌ様は嬉しさのあまり声が出ない様子にございまして」
ローケンが助け船?を出した。
「そうか!そうだろうな!ああ、謁見など、ものものしいのは止めにしよう。私の部屋でゆっくり話そうではないか!」
いきなりマイルーム!?
なんか色々飛び越えたよね?
初対面にも等しい間柄で、しかもっ!!
会って早々「醜女」って言ったくせにこの距離の詰め方!!
ある意味天才的(図々しい)………。
その才能、別のことに使えばいいのに!
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