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王都

101.道中、天幕の2人

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頬に当たる風、力強い太陽、ドミニオンの美しい鬣、後ろには煌めく騎士団長……そして、私のお尻は強烈な痛みに悲鳴を上げている……。
外の景色や風を感じたくてドミニオンに乗ったけど、実は今、ローケンと馬車に乗ればよかったと少し後悔している。
馬車でも振動がくるのは、ムーンバレーへの行き道で体験済みだけど、それでも馬よりは揺れない。

「大丈夫か?」

「へ?あ、うん」

うん、じゃない。
どうして、お尻が痛い!って言えないのかっ!
ちょっと前の私なら即言っているのに、何か少し恥ずかしいというか……。
でも、言わなきゃ絶対気付かないわよねぇ……。

ディランは黙って私を見、それから片手を大きく振り上げた。

「ここで休憩をとる!」

その声に、騎士団は近くの開けた場所に陣を敷いた。
統率の取れた動きで、あっという間に天幕が出来上がる。
ディランはそこに私を運び、自分はすぐに後続部隊の様子を見に行った。

どうしてかはわからないけど助かったわ。
あのままだったら、後で座れないくらい重症になっていたかもしれないもの。
それにしても、どうしてディラン、気づいたの?
いえ、違うわね、たまたま自分も休みたかっただけだわ。
そう納得すると、クレバードが持ってきてくれた、冷たいハチミツ入りレモンジュースを半分ほど飲み干した。

「失礼します。シルベーヌ様?あの……腰が痛いのですか?」

天幕の入り口から、ヒューゴが顔を出した。

「ん?どうして知ってるの?」

「団長が見てくれって言ってきたんです」

「ディランが!?……知ってたんだ……」

そんなことにまで気付くなんて!
どちらかというと、無神経(ごめん)に見えて、本当はとっても気が回るなんて……もう!敵わないわね。
私の表情を見ながら、ヒューゴは笑い、背負った袋からあるものを取り出した。

「このまま団長とドミニオンでいくのならコレを使って下さい」

「これは?」

「下敷きです。ドミニオンの背に敷いてその上に座ります。振動を軽減してくれるので、衝撃が和らぎますよ。ドミニオンは賢い馬ですから、下敷きを使っても暴れたりはしません」

「まぁ、便利なものがあるのね」

「どうします?馬車でもいいんですが……」

「ううん。ディランとドミニオンで一緒にいくわ」

「ふふっ、わかりました。では腰の具合を見ましょうか?」

「はーい。お願いね」

ヒューゴは軽く腰を擦り、痛む箇所を私から聞くと、1つ軟膏を手渡して去った。
「患部に擦り込んで下さい」というので、誰にも見つからないようにそっとドレスをたくしあげ腰に塗る。
その行動は不審そのものだけど、幸運なことに、塗っている間天幕には誰も来なかった。

「シルベーヌ様、いいか?」

ディランの声だ。

「はーい、どうぞ、大丈夫です」

軟膏のスーッとする成分が、多少痛みを和らげ、ほっとした私は上機嫌で答えた。
ディランは天幕に入ると、そっと私の隣に座った。

「疲れはとれたか?」

「うん、あ!ありがとう、痛かったの気付いてたんでしょ?」

「ん。まぁな。シルベーヌ様のような身分の方が、馬に長時間乗るなんてあまりないことだし(ずっと見ていればわかるんだよ。俺は君しか見てないから)」

「そっか。ふふ、助かったわ。あ、そうだ、ヒューゴに下敷きを貸してもらったの!これでまたドミニオンに乗れるわね!」

「え……馬車にしないのか?」

………ちょっと愕然とした。
まさかそう聞かれるとは思ってなかったから。
だって、いつも強引に拉致されてるし!
今更馬車を勧められるなんて思わないでしょ!?

「………馬車にした方がいい??」

探るような私の目に驚いたのか、ディランは慌てた。

「いやっ!シルベーヌ様がドミニオンで(俺の側で)いいのならそれでいい(それがいい)」

「本当にぃ??迷惑だとおもってない?」

「思ってない!(思うわけがない!嬉しくて死にそうだ……あ、死んでたな)」

「ふぅん。じゃあ、またよろしくね」

「ああ……よ、よろしく」

ふっと目を逸らしたディランを不審に思いながら、私は残ったハチミツレモンジュースを流し込んだ。



















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